独りぼっちの誰かのために。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その④〜
こんにちは。
1歳になったばかりの我が娘・おタマ、日々活発におしゃべりしております。
私「(夫・ナコ太氏の写真を指さして)この人、誰?」
おタマ「ふんじょごぶんご!」
ナコ太氏「そうです、私が ふんじょごぶんご です」
こんな、ゆるい会話を日々楽しんでいます。
(調子が良いときは「パパ」って言ってくれますよ。)
そんなおタマですが、「パパ」の他にも、寝かしつけのときにいつも私が「ねんね」と言うので「ネンネ、ネンネ」と繰り返して言っていたり(でも全然寝ないんですけどね)、私がかばんの中を探して「鍵、ない、ない」と言っていると、おんぶひもで背中にくっついたおタマも一緒に「ナイ、ナイ」と言ってくれたりしています。意味がわかって言っているのかは謎です。あと、こんなに色々言えるのに、なぜ「ママ」を言ってくれないのだ。ぐすん。
あ、ごはんを食べるときは、「んま、んま」と言っています。ごはんに負けたー。
さて、前回の続きです。チェブラーシカでロシア語を学ぶ、その④でございます。
前回までの記事はこちら。
チェブラーシカの名前の秘密。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その①〜
名前だって変幻自在。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その②〜
いたずらで宣戦布告?〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その③〜
シャパクリャクばあさんから意味不明な宣戦布告を受け、唖然としているゲーナたち。
そこへ、ライオンのおじさんの登場です。
レフ・チャンドル:Лев... Лев Чандр.(私はレフ…レフ・チャンドル。)
ゲーナ:Гена - Крокодил. Мои друзья.(ゲーナです、ワニです。私の友だちです。)
レフ:Дааа, а у меня нет друзей.(ああ、そして私には友だちがいない。)
この「レフ(Лев)」という名前、有名なところでは文豪レフ・トルストイや、楽器のテルミンの発明者レフ・テルミンなどの名前と同じですね。
ところが、調べてみたところ、なんとлевという単語はそのままライオンを意味するのだとか! トルストイやテルミンの名前、ライオンさんだったんですねー。英語圏でいうと、レオとかライオネルといった名前に近いでしょうか。日本人だと「ししお」さん、とか?(笑)
何にしても、ライオンのレフおじさん。わかりやすいです。ゲーナもきちんと自己紹介。
друг(友だち)という単語、複数形は不規則変化でдрузья。更にレフのせりふでは"у меня нет 〜"(私には〜がない)の構文で否定生格が適用され、複数生格のдрузейになっています。
ところで、この否定生格。つまり、ロシア語では「〜がある」という文で主格が使われるのに「〜がない」になると生格に格変化しちゃうという現象。最初見たときは、どうも納得がいかなかったのですが、よく考えたら日本語も「ある」は動詞なのに「ない」は形容詞だったりして、結局なんだか不条理ですね。
ことばって複雑なもので、でもふだん何気なく使っているものには、なかなか気づけなかったりするのかもしれません。
さて、閑話休題。続きです。
トービク:Я! Я буду с вами дружить!(僕が! 僕があなたと友だちになります!)
レフ: Ну что ж, прекрасно, теперь я буду не один.(ああ、いいね、もう私は独りではない。)
今までワンワン吠えるだけだった犬のトービクがいきなりしゃべるもんだから、「あ…あんた、しゃべれたの!?」ってなりますが、まあ気にしない。わりと甲高いかわいい声です。
レフのせりふ、ну что жというのは成句で、英語でいうとwellとかalright、OKにあたるフレーズだそうです。「ああ、そうだね」「いいね」とでも訳せましょうか。
теперьという語は「今は、今度は」という意味で、さっきまでと違って今は…というニュアンスを出すことができる語です。
ゲーナ:А вы знаете, сколько в нашем городе живёт таких одиноких, как Чандр и Тобик?
(知ってるかい、僕たちの町には、チャンドルやトービクのように独ぼっちの人が、どれくらいいるのか。)
И никто их не жалеет, когда им бывает грустно.
(そして、彼らが悲しんでいるとき、誰も彼らを気の毒に思わないんだ。)
去っていくレフとトービクを見つめながら、ぽつりとつぶやくゲーナ。
вы знаетеというのは、直訳すると「知っていますか?」ですが、ここでは語りの糸口に「ねえ、ところで」と注意を惹くような役割のフレーズだと思われます。
одинокийは「孤独な、単身の」という意味の形容詞ですが、名詞として「独身者、独りぼっちの人」を指すこともあります。ここでは後者の意味。сколькоを使って「独りぼっちの人が、どれだけいるんだろう」という文になっていますが、ここは反語的な意味で「独りぼっちの人が、数えきれないくらいたくさんいる」と言いたいのだと思います。
живёт таких одинокихで「こんなふうに独りで暮らす」、ここでтакой одинокийが対格?生格?に格変化しているのがよくわかりませんが…動詞житьが対格補語をとる、ということかしら。
никтоは「誰も〜ない」という意味、жалеетはжалеть「気の毒に思う」の三人称単数形なので、никто их не жалеетで「誰も彼らを気の毒に思わない。」
когдаは「〜するとき」で文をつなげる関係代名詞ですね。бывать грустноは「悲しんでいる」。つまり、誰かが独りぼっちでさみしい思いをしているとき、誰もその人に寄り添ってあげていない、ということをゲーナは嘆いているのですね。
チェブラーシカ:Я хочу помоть им.(ぼく、彼らを助けたい!)
ガーリャ:И я хочу, но как!?(私も助けたいわ、でも、どうやって!?)
ゲーナ:А я уже придумал! Их надо передружить!
(思いついた! 彼らには、友だちの橋渡しが必要なんだ!)
独りぼっちの人を何とかしてあげたい、と考えるチェブとガーリャ。
ゲーナのя уже придумалというせりふ、придуматьは完了体で「思いつく」なので、「あっ、今思いついた!」という意味になります。
их надо〜で「彼らには〜が必要だ」。передружитьという動詞が曲者でして、辞書には見当たらないことばなのですが、пере+дружитьと分けて考えると何とかなりそうです。пере-という接頭辞は、идтиとくっついてперейти=「向こうへ渡る、横断する」になるので、дружить「友だちになる」という動詞に「橋渡しをする、そういう状態にしてあげる」というニュアンスを加えるものと思われます。
つまり、独りぼっちの人に手を差し伸べて、友だちをつくる手助けをしてあげよう! ということになるのですね。
彼らの、この「孤独な人に手を差し伸べたい」という純真さ…。心が洗われるようで、何というか、水をさすような言葉を差し挟む隙がない、と言いましょうか。人として、大切なものを思い出させてくれるような気がします。
さて、独りぼっちの人が、友だちをつくるために…ゲーナたちに、何ができるのでしょうか?
短いですが、今日はここまでです。
次回をお楽しみに。
いたずらで宣戦布告?〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その③〜
こんにちは。
前回記事を読んだナコ太さんから、「今回は育児の小ネタ、なかったねえ」とクレームをいただきました。
そうか…楽しみにしてくれていたのか…。
まあ私が書く育児ネタって、ナコ太さんが知ってることばかりなんですけどね。(当たり前や)
というわけで、1歳になりました我らが娘、おタマ。
最近は言葉がわかってきたようなそぶりを色々と見せてくれます。
ですが、発する言葉はおおむね「パパ」。
平日昼間も、いつだって「パパ」。
パパは今お仕事がんばってるからね〜、と説明しても、私をじっと見つめて「パパ」。
ナコ太さんが傍にいようがいまいが、ずーっと「パパ」と言っております。
私と一緒にいる時間の方が長いのに…このパパっ子め…。
と、半ばいじけた気持ちでおった私ですが、先日、ナコ太さんにおタマを任せて外出したときのこと。おタマ、私が去っていった方を見て、ずっと「パパ、パパ!」と言っていたそうです。
これって、ひょっとして…。
本人は「ママ」って言ってるつもりなのだろうか?
そう考えると、私と二人のときに私を見つめて「パパ」と言っていることも腑に落ちます。
前にも書きましたが、音声学的に考えても、m音よりp音の方が出しやすいのです。つまり、本人はm音を出しているつもりでもp音になってしまう、または聴き分けができてもまだ言い分けることができない、という可能性は充分あり得ます。
あるいは、おタマの中では、私とナコ太さんを両方ひっくるめて「パパ=養育者」という構図が成り立っているのやも。
どちらにしても、私のことを無視してパパを呼びつづけている訳ではないらしい、ということがわかって一安心です。
子どもの成長のプロセスって本当におもしろいですね。
さて、前回の続きです。愛くるしい人形アニメ「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ、その3。
最初は独りぼっちだったチェブラーシカですが、ワニのゲーナ、人間の女の子ガーリャ、そして犬のトービクと、無事に友だちになることができました。
しかし、このまま「めでたしめでたし」…とは問屋が卸さず、物語は急展開(?)を迎えます。
いじわる・いたずらを趣味にしている、怪しげなシャパクリャクばあさんの登場です。
コミカルな音楽とともに、歌いながら登場するシャパクリャク。ミュージカルのようで惹き込まれますね。まあ歌詞の内容は「人助けなんか時間の無駄、いたずらしていた方がまし」というひどいものですが。まじめそうな掃除夫さんにからみながら、ちょこまかと歌って踊ります。
Кто людям помогает,(人助けをする人は)
Лишь тратит время зря, ха-ха.(時間を無駄に垂れ流すだけ、ハハハ)
Хорошими делами,(善い行いをしても)
Прославиться нельзя, ха-ха.(有名になることはできない、ハハハ)
一行目、最初のктоは、「〜する人」をさす関係代名詞です。
людямは、люди(人々、常に複数形)がпомогать(助ける)の要求で与格形になっています。合わせて「人々を助ける人」ということですね。
лишьはлить(注ぐ)の二人称単数形、тратитはтратить(むだにする)の三人称単数形(?)。зряは副詞で「不必要に」。
хорошими деламиはхорошее дело(善い行い)の複数造格形。「善い行いをもって」で次につなげます。
прославитьсяは「有名になる」。後ろにнельзя(だめだ)がくっついているので、「有名になれない」、つまり「善い行いで名声を得ることはできない」という意味になります。
Поэтому я совсем каждому советую(だから皆にはっきりとおすすめするわ)
Всё делать точно так,(皆、まさに、こういうふうにするの)
Как делает старуха(ばあさんのするように)
По кличке Шапокляк.(シャパクリャクばあさんのね)
倒置法が入ってくるので、訳がなんともぎこちないですが、ご容赦を。
каждомуはкаждыйの与格形。каждыйは「それぞれの」を意味する形容詞ですが、名詞として「それぞれの人、各人」という意味でも使うことができます。名詞でも、格変化のパターンは形容詞と同じです。
советовать(ここでは一人称単数形советую)+与格形〜(каждому)+不定形…(делать)
で、「〜に…を忠告する、勧める」という構文ですね。
では、どうすることを勧めているのか、という内容が、3行目のкак以下。
старухаは「おばあさん」、по кличкеは「〜というあだ名の」(по+кличка「あだ名」与格形)。
合わせて、「シャパクリャクと呼ばれるおばあさんのするように」、つまり私のまねをしなさいと言っているわけです。
で、歌い終わるやいなや、ゴミ箱を蹴っ飛ばしてゴミをぶちまけ、переход「横断歩道」の標識の向きを変え、パチンコを取り出してどこかのガラスを派手に割り、掲示板の張り紙にいたずら書きをするシャパクリャク。いい歳したおばあさんが、ひどいものです。が、どこか憎めないかわいらしさもあるのが不思議なところ。
細かいですが、掲示板のいたずら書きも、よ〜く見ると読めますね。
меняю、требуетсяという動詞の前に、それぞれ否定の"не"を書き加えています。
меняюはменять(変更する)の一人称単数形。требуетсяはтребовать(必要とする、要求する)の三人称単数形、英語でいうwantedのような意味でしょうか。
この両者に"не"をつけてしまったので、それぞれ「変更しません」「募集しません」という逆の意味になっちゃうわけですね。迷惑だなあ。
更に更に、シャパクリャクばあさん、ゲーナの書いた「友だち募集」の紙も目ざとく見つけ、ひっぺがして持ち去ってしまいます。
ということは、ゲーナのもとに行くつもり? 一体何が起こるのやら…。
場面は変わって、ゲーナのおうちの前です。友だちになったチェブたち御一行が、楽しそうに遊んでいます。目隠しをして鬼ごっこのようなことをしていますね。「こっちだよ〜」と呼ぶ掛け声、どうつづるのかわかりませんが、ロシア語でも「ココ〜」と言っているようでちょっとおもしろいです。
そこへ通りかかるシャパクリャク。ゲーナが友だちと間違えてシャパクリャクをつかまえちゃったりしたあと、シャパクリャクの連れているкрыса(クマネズミ)に怯えてみんな逃げてしまいますが、チェブは動じません。
※このкрысаという語、露英辞典ではmuskrat、Norway ratと出てくるのですが、字幕のクマネズミblack ratとの関係は?? 動物の専門家ではないのでわかりませんが…ま、どっちにしてもネズミを連れてるおばあさんって、なんか怖いですよね。
シャパクリャク:А... ты не боишься крыс? (あなた、クマネズミが怖くないの?)
チェブ:Нет.(怖くない。)
シャパクリャク:Темнота! Лариска, ко мне!(あきれた! ラリースカ、こっちよ!)
крысаが、бояться(怖がる)の要求で複数生格крысになっています。
темнотаという語は、辞書によると「暗闇」とのことですが…。「クマネズミが怖くないなんて、わかってないわね、視野が狭いわね、あなた」みたいなことでしょうか?
ко мнеで「私のもとへ」。こっちへ来なさい、という意味でよく使われるフレーズです。
そんな二人(一人と一匹?)の様子を、恐る恐る見守るゲーナたち。気づいたシャパクリャク、友だち募集の紙を取り出してゲーナに見せます。
シャパ:Это вы писали? (これはあなたが書いたのですか?)
ゲーナ:конечно, я.(もちろん、私ですよ。)
シャパ:Это хорошо, хорошо что вы зелёный и плоский...(これはすてき、あなた、緑色で、平たくて…)
ゲーナ:Но почему?(でも、なぜです?)
なぜか、ゲーナの緑色で平たい容姿に、大いに感動しているらしいシャパクリャク。
シャパ:Очень просто - Вы лежите на газоне, и вас не видно,
(とっても簡単よ、あなたが芝生に寝そべる、そうするとあなたは見えなくなる、)
мы бросаем кошелёк на верёвочке, прохожий нагибается,
(私たちが財布をひもにつけて投げて、通行人がしゃがむと、)
а кошелёк убегает...Здорово, а!?
(財布は逃げる…いいでしょ、え!?)
газонが「芝生」なので、лежать на газонеで「芝生に寝そべる」。
видноは「見える」の意味ですが、挿入句として「どうやら、見たところ」という意味にも使える語ですね。ゲーナは緑色で顔が平べったいので、芝生に寝そべると目立たなくなると言っています。
верёвочкеという語は恐らくверёвочкаの前置格形ですが、辞書には見当たりませんでした。代わりにверёвка(ひも、糸)という語を見つけたので、恐らくこれの指小形なのでしょう。
нагибатьсяは「しゃがむ」、通行人がкошелёк(財布)を取ろうとしてしゃがむということですね。
убегать、「走る」という意味のбегатьに「去る」の意味を加えるуがくっついて、「走り去る」となります。идтиがуйти、ходитьがуходитьになるのと同じですね。
どうやらシャパクリャクばあさん、通行人を財布で釣って遊ぶという悪趣味ないたずらに、ゲーナたちを巻き込もうとしている様子。
ゲーナ:Нет, не здорово!(いいえ、よくありません!)
ガーリャ:И даже очень глупо!(むしろ、とっても愚かよ!)
シャパ:Что!? Тогда я объявляю вам войну! Привет!
(何ですって!? それじゃあ、見てらっしゃい! ごきげんよう!)
うーん、よく言った! とばかりに、いたずら案に反対するゲーナとガーリャ。
怒ったシャパクリャクばあさん、я объявляю вам войну!と。これ、直訳すると「あなたたちに宣戦布告する」というような大仰な意味になるわけですが(войнаは「戦争」ですからね)、「私に言ったこと後悔するわよ、覚えてらっしゃい」ぐらいのニュアンスだと思います。そこまで言わなくても…と思わせるシャパクリャクばあさんの極端なキャラ造形。なんとも魅力的ですね。
さあ、啖呵を切って去っていったシャパクリャクばあさん。次は何が起こるのやら。
今日は眠たくなってきたので、このへんにしておきます。
ではまた。
名前だって変幻自在。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その②〜
こんにちは。
語学オタクの新米(娘も1歳になったし、そろそろ新米も卒業…?)かあさんが、ロシア語とスペイン語と英語を楽しく学んでおります当ブログ。
今回は、DVD「チェブラーシカ」のスクリプトを使ったロシア語学習、第2回です。
(第1回の記事はこちら。)
とつぜん現れた「正体不明」の生き物、チェブラーシカ。電話ボックスを住処に、リサイクルショップの見せ物(!)としての仕事を始めようというところまでが、前回の内容でした。今回は場面が変わり、ワニのゲーナの登場です。
舞台は動物園。ワニの檻にワニさんが座っております。
ナレーション:В городе жил крокодил по имени Гена.(町に、ゲーナという名のワニが住んでいました。)
А работал в зоопарке. Крокодил.(動物園で、ワニとして働いていました。)
ひとつだけ、по имени 〜で、「〜という名前の」。
これ以外は、基本の構文なので、特に注釈はいらないと思います。
余談ですが、ロシア語って語順が自由ですねえ。上の一文目では、「町に、住んでいた、ワニが、名前を、ゲーナという」みたいな順番になっています。主格、前置格など、文章の中での単語の役割が格で表現できちゃうので、英語のように「主語が最初にこないと意味わかんない」という事態にならずに済むわけです。主格になっている単語を主語だと考えればいいわけですからね。格変化を覚えるのが大変! なロシア語ですが、考えようによっては語順に縛られず、自由に言いたいことを表現できちゃう言語だなあ、と改めて感じます。
さて、「動物が動物園で働いている」というのもユニークな表現ですが、終業時刻を報せるものらしいチャイムが鳴るやいなや、ワニのゲーナはコートを着て帰り支度を始めます。
えっ、服着るの?
それに二足歩行してますけど??
動物園の門には、ライオン、クマなど、色々な動物がお洋服を着て次々と現れ、スタスタと2本の足で家路へと向かいます。うーん、動物園での動物らしい様子は「お仕事」で、おうちでは人間と同じような生活をしているようですね。こういう不思議な世界観が、なんともユーモラスで魅力的な作品です。
さて、家に帰り着いたゲーナ。
しばらく退屈そうに色んなおもちゃをいじったあと、おもむろに便せんを取り出して何事か書きつけはじめます。
ゲーナ:Молодой карока... нет. Кракодил хочет завести себе друзей.Точка.
(わかい、カロコ…いや、クラコジル(ワニ)が、ともだちを欲しがっています。まる。)
ゲーナ、家でひとりは退屈だから、ともだちが欲しかったんですね。募集の紙を作っているようです。
завести себе друзейという表現が耳慣れないと思ったのですが、辞書によると、завестиは「連れてくる、導く」というような意味だそうです。公的文書(?)だから、三人称を用いて「ともだちを自分自身に連れてきたがっています」と、少し距離を置いた表現にしているのでしょうか。
друзейはдруг(友だち)の複数対格形。活動体なので生格と同じ形ですね。
точкаは文の終わりに打つ点、いわゆるピリオドのこと。言いながら書くのがかわいいです。
一枚書き終わると、次の紙に取り掛かるゲーナ。どうやら、町中にこの紙を貼ってまわるつもりのようです。
ところ変わってチェブラーシカの住処である電話ボックス。ひとりぼっちで、まわるコマをじーっと見つめるチェブの寂しげなロングショットのあと、電話ボックスのドアに友だち募集用紙が貼られているのを見つけます。チェブはゲーナと友だちになれるのかな?
そしてまた場面転換。こんどは悲しそうにすすり泣く犬が登場。迷い犬でしょうか。かわいい女の子・ガーリャが歩み寄ります。
ガーリャ:Не плачь. Пойдём со мной.(泣かないで。私と行きましょう。)
платьは、動詞плакать(泣く)の単数命令形。不規則変化です。
完了体動詞пойтиの一人称複数形пойдёмで、「行きましょう」という勧誘の形になります。
勧誘の形にしたいのが完了体動詞なら一人称複数形、不完了体動詞なら不定形を使います。私はいつもごっちゃになるので、不完了体が不定形、「不・不」で覚えています。
犬ちゃんと友達になったガーリャ。ゲーナの友だち募集文を見つけ、ゲーナのおうちに向かいます。
ガーリャ:Это вам нужны друзья?(友だちを欲しがっているのは、あなた?)
ゲーナ:Друзья! Мне!(友だち! 私だよ!)
ガーリャ:Галя.(ガーリャです。)
ゲーナ:Гена. Кроколил.(ゲーナ。ワニだよ。)
ガーリャ:У вас есть молоко?(ミルクはありますか?)
ゲーナ:Конечно, есть!(もちろん、ありますよ!)
初めて会う相手なので、вам, нужныと複数形(=丁寧形)を使って会話しています。
下から2つめのу вас есть〜という構文、NHKの「テレビでロシア語」講座にも頻繁に出てきた形でして、初めてこのDVDを観たときに聴き取れたのが嬉しかったなあ。молоко(ミルク)も基本単語ですね。
ガーリャ:Покоримте Тобика.(トービクにあげてください。)
ゲーナ:Тобик!(トービク!)
ガーリャ:Я пока приберу - у вас токой беспорядок.(私は今のところ、そうじするわね —こんなに散らかっているもの。)
покормитеという語の不定形は恐らくпокормитьなのでしょうが、手許の辞書には載っていませんでした。ただ、кормить(餌や食事を与える)という語があるので、「ちょっと〜する」という意味になる接頭辞поをつけて「ちょっとあげる」となるのではないかと思います。
покормите Тобика(トービクにあげる)、Тобикという犬の名前が対格に変化しています。固有名詞も平気で格変化するロシア語の妙。いつも思うのですが、初めて聞いた名前が格変化していて、よくパッと元の名前を類推できるなあ。慣れなんだろうなあ。
приберуはприбрать(整頓する、きれいにする)の一人称単数形。
беспорядокは「混沌、散らかっていること」だそうです。ハッキリ言うものですね。
そこへ訪ねてくるチェブラーシカ。道すがら、花なんか摘んじゃったりして(でも結局持っていかなかった…このあたりの描写も細かい)。ゲーナの家のドアをノックします。
ゲーナ:Кто там?(誰ですか?)
チェブ:Это я - Чебурашка.(ぼくです…チェブラーシカです。)
ゲーナ:Чебурашка...(チェブラーシカ…)
ガーリャ:Кто вы такой?(あなた、いったい誰なの?)
チェブ:А я не знаю.(わからないの。)
このКто (Что) 〜 такой?という構文、「〜とは、一体?」というニュアンスが出る便利な文です。一回聞いてもわからなかったり、詳細の説明を求めたりするときに使えますね。
ガーリャ:Вы, случайно, не медвежонок?(あなた、ひょっとして、小熊じゃないの?)
チェブ:Может быть, не знаю я.(そうかもしれない。ぼくには、わからない。)
ゲーナ:Сейчас, сейчас, посмотрим. Так, «Че»... чай, чемодан, чебуреки...
(今、ちょっと見てみよう。えーと、「チェ」…チャイ(お茶)、チェマダン(スーツケース)、チェブレキ…)
Странно, никаких Чебурашек нет.(おかしいな。どんなチェブラーシカも載っていない。)
случайноは「ひょっとして、偶然に」。случаться(起こる、巡り合わせる)に通じる語でしょうか。
медвежонокは「小熊」。ふつうの熊はмедведьです。余談ですが、ロシアの元大統領メドベージェフ(медведев)さんや、フィギュアスケーターのメドベージェワ(медведева)さんの名字は、この「熊」から来ているそうですね。日本の名前でいうと「熊田さん」みたいな感覚でしょうか。
может бытьで「〜かもしれない」、これも便利なフレーズ。
сейчасは「今」という意味の語ですが、ロシア映画など観ていると、「ちょっとまって、いま〜するから」というニュアンスを出すのに、よく"сейчас, сейчас"という表現が使われているように思います。
律儀に辞書で「チェブラーシカ」を調べるゲーナですが、どうやら載っていないようです。ちなみに「チェブレキ」はクリミア・タタールの料理чебурек(チェブレク)の複数形で、味付けした羊のひき肉の揚げ餃子のようなものだそうです。おいしそうです。
ЧебурашекはЧебурашкаの複数生格形。「辞書にない」という否定の構文なので、否定生格になるのはわかるのですが、なぜ複数形なのでしょうか。Чебурашкаを一般名詞ととらえて、「たくさんあるはずのチェブラーシカが一つも載っていない」ということなのかしら。
никакихはникакой(どんな〜も)の変化形。Чебурашекに合わせて複数生格になっています。
チェブ:Значит, значит, вы не будете со мной дружить?(ってことは、てことは、あなたたちは僕と友だちにならないってこと?)
ガーリャ:Почему? Будем, будем! Я научу тебя вязать на спицах.(どうして?なりましょう、なりましょう!私はあなたに、編み針で編む方法を教えるわ。)
ゲーナ:А я - пускать мыльные пузыри.(では私は、石けんでシャボン玉を作ってみせよう。)
значитはзначить(意味する)の三人称単数形ですが、慣用的に「ということは〜」という意味でよく用いられます。
дружитьは「友だちになる」という意味の動詞ですね。
научуの不定形はнаучить(教える)。вязать на спицахで(編み針を使って編み物をする)となります。道具を使う表現ですが、с+造格ではなく、на+前置格なのだなあ。
пускатьという表現も辞書には見当たらないのですが、ぐぐってみると「動かす、放つ」というような意味がヒットします。мыльные пузыри(せっけんで作るシャボン玉、複数形)を作って放つ、というニュアンスにふさわしい動詞なのでしょうね。
ぶじに友だちをつくることができたチェブラーシカ。よかったね。
ところが、このあと、いじわるばあさんシェパクリャクの登場!
さあ、どうなる!?
と、今日のところは、ここまでにしておきます。
次回をお楽しみに〜。
近況報告&合格報告。
こんにちは。たいへん長らくごぶさた致しました。
8月ということで、ひょっとするとお察しいただいていたかもしれませんが、実家に帰省しておりました。
ということで、今日はちょっとした近況報告回です。ロシア語関連のお話はまた後日。
(スペイン語の話は、最後のほうにちょこっとあります)
さて、帰省準備に取り掛かる前にもう一回くらいブログ更新できるかな? と思っていた私ですが、どうにもバタバタしてしまい…。というのも、私どもが現在住んでいる北陸地方から、まずは私の故郷・関西へ、そして夫の故郷・九州へと、赤子をつれてハシゴ帰省しておったのでございます。
しかも、お盆の混雑を避けるため(あと私が実家でゴロゴロするため)、私とおタマだけ1週間先に関西へ出発することになっていたので、育児グッズをギッシリ詰めたバックパックを背負いベビーカーを押しお土産を持ち、一人(まあ二人ですけど)でバスや特急を乗り継いでの帰省とあいなりました。今となっては、サンダーバードの中でおタマを抱えながらどうやってベビーカーを畳んだのか、よく覚えていません。あ、でも道すがら、たくさんの人に助けていただいたのは覚えております。親切な人がたくさんいらっしゃって涙が出そうでした。その節は本当にありがとうございました。
そんなこんなで、ぶじに2週間の期間をなごやかに両実家で過ごし、さあ帰るぞ!という日の朝。おタマ、まさかの発熱。39度! あわわわわ。「色んなとこに行ったから、知恵熱かしらねー」なんて言いながら、ゆるめのスケジュールにしていたのをいいことに帰宅を延期し、九州のご実家でゆっくり休ませていただきました(ありがとうざいました!)。翌日おタマは無事に回復。いったん関西の実家にUターンし、1泊(ありがとう!)したのち北陸へ帰宅。長旅の荷物もすべて片付き、ようやくこれで一息…と思ったら、なんだか寒気が!えっ、いやいやいや、そんなはずは…と思って熱を測ったところ…
39度でした。
見事にうつりました、知恵熱。
私も母として初めての経験いっぱいしたからネー(棒読み)
まあ、帰ってきた翌日は、所用があっておタマを保育園に預ける予定だったので、このままゆっくり休ませてもらおう…。ということで、一昨日までダウンしておりました。
私がそんな調子でしたので、定時退社マンのナコ太さんに育児を全権委任し、半日ほどがんばっていただいたのですが、娘の寝かしつけが終わって一言…
「一人でおタマちゃんのお世話…思ってた以上に大変やった…」
と、まさに「orz」の姿勢でグッタリと電池切れしておりました。
うん、私への最大の褒め言葉ですな。平日だけでもワンオペ育児は大変です。
まあ、私はおタマが一日中寝てばかりの新生児期から少しずつ慣らして、今の手抜き育児(笑)の手法を確立してきているので、いきなりやることになったナコ太さんとは色々な面で事情が異なりますが。
とはいっても、ナコ太さんが日頃から家事&育児に関わってくれているお陰で、私が寝ている間もほぼ何も聞かれずに安心して休むことができました。ありがとです。一晩休んで風邪の症状も落ち着き、こうしていま元気にブログを執筆しております。
余談ですが、おタマを保育園(初めての一時保育)に連れていくのも、午前休をとってナコ太さんがやってくれました。
帰ってきたナコ太さん、(:_;)←こんな顔になっているので、話を聞いてみると。
ナ「(:_;)」
私「えっなに、どないしたん」
ナ「おタマちゃんが…」
私「おタマがどうした。預けてきたんでしょ」
ナ「預けたけど…」
私「何やねんな」
ナ「泣いてた…(:_;)」
私「……」
どうやら、預けるときに別れを惜しんでおタマがギャン泣きしたようなのですが、娘がかわいいあまり感情移入しちゃうナコ太さん。相変わらず、ガラスのハートの持ち主です。
保育園からの連絡によると、おタマは父との別れにしばらく泣いたあと、おむつを替えてもらったらケロっとしてオモチャで遊びはじめたそうです(父のほうが別れを引きずっていたやも…)。保育園あるあるですよねー。
おタマももう1歳。同じ月齢の子たちはママさんが復職して保育園に入る子が多いですが、私は育休を3年取得する予定なので(このへんの事情についてもまたゆっくり書けたらいいな)、保育園入園はまだまだ先です。が、私やおうちにベッタリになってしまわないよう、時々はこうして一時保育に預けるなどしていきたいと思っています。おタマも少しずつ、外の世界に慣れていってほしいな。保育園はそこそこ楽しかったらしく、給食もしっかりおかわりしたそうです(笑)。さすがおタマ。
と、こんな日々を過ごしておりましたが、勉強はしっかり続けていましたよ! むしろ実家にいる間は、雑念にとらわれず集中して勉強することができ、ありがたい限りでございました(夫の実家で勉学に勤しむ嫁…笑)。
次のスペイン語検定4級受検、そしてロシア語検定試験ТРКИ受検(こっちはちょっと弱気だけど…)に向けて、着々と準備を進めております。
で、すっかり忘れておったのですが、スペイン語検定5級の合格通知が届きました。
得点は? 合格率は? 全体の講評と模範解答は??
と、ワクワクしながら封筒を開けたのですが、
ぺらっ…
中身は、合格証書1枚のみでした。
………。
あっれー?
6級のときもそうだっけー??
いや、きっとそうでした。そのときは「まあ一番低い級だからな…」と思った記憶があるのですが…ひょっとして、全部の級、詳細情報なし?
いや、3級からは面接があるから、ひょっとして…??
うーん…謎です。
まあ、とにかく合格したから、よしとしましょう。
(何点とったかくらいは教えてほしいもんだけど…過去問も入手困難だし。)
4級対策については、必要語彙数約2000のうち8割方は頭に入ったかんじです(多分)。文法も、NHKラジオ「まいにちスペイン語中級編」で、接続法過去まで復習が進んでおります。
問題集および過去問を使った演習は、9月に入ってから。
10月末の試験まで、じっくり対策を続けますよー。
と言いつつ、当ブログでは次回より、引き続きロシア語の話をしていきますー。
チェブラーシカの字幕解説、続き! お楽しみに。
ではまた。
チェブラーシカの名前の秘密。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その①〜
こんにちは。
生後11ヵ月になりました我が娘・おタマ、最近はおしゃべりが盛んです。
「ごにょごにょ」「ぷぎゃ」「てぃこんてぃこん」と、色んな発音ができるようになってまいりました。こちらも負けじと「ごにょ!ごにょごにょ!?」とお返事し、会話を楽しんでおります。
娘がいちばん最初に発声できるようになった音が「パパパ」、その後「マンマ」「ダダダ」「ナンナン」と続き、最近はガ行やカ行の音も組み合わせて複雑な発声ができるようになったようです。
おタマの発声を言語学的に分析すると、調音点(音を出す部位)が唇→歯茎→軟口蓋(喉の手前)と口の奥へ向かっていき、調音法(音の出し方)も閉鎖音(破裂音ともいいます)から鼻音へと、複雑になっていっております。こういう言語獲得のプロセスを目の当たりにするのは、語学オタクとしてまことに楽しいものです。
「パパ」が「ママ」の発声より先だった悔しさも、「まあ鼻音より閉鎖音の方が発声しやすいしね…」と納得することができるわけです。笑。
さて、のっけからマニアックな話をしてしまいましたが、前回の続き。
チェブラーシカ(Чебурашка)のアニメを使った学習を進めてまいります。
私はDVDを買いましたが、YouTubeでも観ることができるので、ロシア語を学習中の方は参考にしていただければ。
(著作権の問題があるのでリンクは貼りませんが、Чебурашкаで動画検索すればヒットするはずです)
今回はDVD収録順に、最初の作品"Крокодил Гена"(1969年製作、邦題「ワニのゲーナ」)のスクリプトを日本語に訳し、解説していきます。
ただ、私は翻訳の専門家ではなく、ロシア語力も中級にさしかかったレベルなので、わからないところがあったり、間違った訳をしたりといったこともあるかと思います。そのような場合は、コメントでご指摘をいただけるとありがたいです。
ちなみに、スクリプトはインターネットで見つけたものを使用しますが、編集が少し違うためか、ところどころ日本で販売されているDVDとは異なる箇所があります。わかるものは頑張って聴き取ってみますが、わからなければ上記スクリプトをもとに書いていきますので、DVDの内容と違っているところはご容赦ください。
では、始めてみましょう。ロシア語原文と口語訳は青字で書いていきます。
まず、冒頭のシーン。チェブラーシカの記念すべき初登場シーンですね。舞台は野菜や果物を扱うお店。見切れていますが、看板には"ОВОЩИ-ФРУКТЫ"(野菜・果物)の文字が。
果物屋の主人、オレンジが詰められた箱を次々と開けていくと、中からとつぜん奇妙な生き物が現れます。
主人:Оранжес... апельсины.(oranges… オレンジか。)
Опять чебурахнулся. Чебурашка какой!
(またばったり倒れた。まったく、(君は)チェブラーシカだな! )
Что же мне с тобой делать?(さあ、どうしようか?)
チェブラーシカ: Не знаю.(わからない。)
[Закрыто. Ушёл в зоопарк.](閉まっています。動物園へ行っています。)
オレンジに紛れて、なぜか箱の中に入り込んでいた謎の生き物。何度起こしてもフラフラ、バッタリと倒れてしまうその生き物に、主人は「ばったり倒れ屋さん」という意味のチェブラーシカという名前をつけます。
ところで、この「ばったり倒れる」という言葉。чебурахнулся(チェブラフヌールスャ)、過去形になっているので原形に戻すと"чебурахнуться"(チェブラフヌーッツァ)となりましょうか。気になったので辞書を引いてみましたが、載っていませんでした。ウェブで調べても、чебурахнутьсяという動詞は「チェブラーシカの映画に出てくる語」としかヒットせず、うーん…どういう意味だ? ひょっとして、造語? と、のっけからつまずいてしまいました。
あんまり気になったので、大学時代に知り合ったロシア人(日本語ぺらぺら!)の友人に連絡して聞いてみたところ、「オノマトペ的な感覚としてはわかるけど、日常的に使う語ではない」とのこと。
うーん、なるほど。「ちぇぶらふぬーるしゃ!」という響きが、なんかズコーっとすっ転ぶような感じに聞こえるのかな。わかるような、わからないような…。オノマトペの感覚って、日本語もそうですが、ネイティブじゃないとなかなかつかめなかったりしますものね。
というわけで、チェブラーシカ(長いので、以下「チェブ」と表記します)の名前の秘密がわかったところで、次です。
主人のせりふ"Что же мне с тобой делать?"、жеは直前の語を強調するはたらき。「いったい何をしようか」というニュアンスでしょうか。
мне с тобойは「君と私」、мнеがなぜか与格になっていて、動詞делатьが不定形になっているのがよくわかりませんが、「これからどうしようか…」と、チェブと一緒に困ってあげている主人の優しさがにじみ出たせりふのように思います。
最後の立て札の言葉"Ушёл в зоопарк."、ушёлは「去る」という意味の動詞уйтиの過去形で「動物園に行っているので、今はいません」となるわけですね。
とりあえずチェブの居場所を探しに、動物園へとやって来た二人。守衛さんに「オレンジ」と書いた紙を渡し(それで事情がわかるのか…?)、チェブと一緒に動物園で調べてもらいます。
主人:Вот!(ほら!と紙を渡す)
守衛:Не... зтот не пойдёт - неизвестный науке зверь.(いや…これは、うまくいかない。なに科の動物かわからないんだ。)
Не знают, куда его посадить.(どこに入れたらいいのか、わからない。)
この"зтот не пойдёт"、пойдётの不定形пойтиは「歩き出す、動き出す」という意味ですが、どうもコトがうまく運ばない、という意味だと思われます。
неизвестныйは、「有名な」という意味のизвестныйに否定の接頭辞неがついて「知られていない」の意味。наукеは「科学」という意味のнаукаの前置格?ですが、「どの科に分類するか」くらいの意味でしょうか。チェブちゃんは一体どういう種類の動物なのか、動物園でもわからなかったのですね。
"куда его посадить"、посадитьは「座らせる」という意味の語で、「チェブをどの檻に入れたらいいか」ということですね。辞書を引くと、посадить в тюрьмуで「監獄に入れる」という意味になるんだとか。
動物園に入れなかったチェブ(このときの悲しそうな表情といったら!)、今度は主人に連れられて、ディスカウントショップ(看板には"УЦЕНЕННЫЕ ТОВАРЫ"、「ディスカウント商品」の文字)へ。
ディスカウントショップ店長:Мне нравится этот зверь.(この動物、気に入ったよ。)
Он похож на бракованную игрушку.(捨てられたオモチャみたいだ。)
Будешь работать у нас - стоять в витрине привлекать внимание прохожих. Понятно?
(君は僕たちのところで働くんだ。ショーウインドウに立って、通行人の注意をひきつけるんだよ。)
チェブ:Да, понятно. А где я буду жить?(わかった。で、僕はどこに住むの?)
店長:Жить?(住む?)
チェブ:Да.(うん。)
店長:Да, хотя бы здесь.(そうだな、せめて、ここでも。(電話ボックスを指す))
Это и будет твой так сказать дом. Понятно?(ここが君の、いわゆる、家になるんだ。わかった?)
チェブ:угу.(うん。)
このディスカウントショップ(字幕では「リサイクルショップ」)の店長、チェブのことを「気に入った」と言っておきながら、「捨てられたオモチャみたい」と言い放ったり電話ボックスに住まわせたりと、ひどい態度です。ショーウインドウに立って…って、マスコットじゃないんだから。ぷんぷん!
と怒っても仕方ないので、気を取り直して解説。
мне нравитсяは「私は〜が気に入った」、基本の構文ですね。
похожは形容詞похожий(似ている)の短語尾男性形。на+対格で、「〜に似ている」となります。
бракованнуюはбракованный(拒絶された、除外された)の対格形ですね。チェブちゃん、こんなにかわいいのに、ここではB品のオモチャ扱いです。
будешь работатьは未来形。бытьの後に動詞不定形をつなげる形ですね。
стоять в витринеは「ショーウインドウに立つ。」витринеはвитрина(ショーウインドウ)の前置格です。
привлекать внимание прохожихで「通行人の注意を惹く」。прохожихはпрохожий「通行人」の複数生格。名詞ですが形容詞と同じ形なので、形容詞と同じ格変化をします。
ここで、 где я буду жить?(僕はどこに住むの?)というチェブの問いに対してхотя бы здесь.と答える店長。хотя быは「せめて、少なくとも」という意味の成句です。「まあ、これくらいでいいだろう」という店長のいい加減な考えがあらわれたせりふではないかと思います。だって、電話ボックスですものね。
次のせりふより"твой так сказать дом"、так сказатьは「いわゆる、言うなれば」というような意味なので、「これが君の、いわゆる、家みたいなものだ」とお茶をにごすような言い方になっています。
こんな扱いを受けても、健気にうなずいてみせるチェブ。
一体、これからどうなっちゃうの…?
次回、いよいよ本作の主人公「ワニのゲーナ」が登場!
というわけで、カメのようなゆったりペースですが、今日はこのへんで。本作は20分ほどの短い作品なので、少しずつゆったりと、しかし確実に、完走めざして頑張ってまいります。
では、また。