ロシアのバーガーキング広告を逐語訳してみた。
こんにちは。
生後10ヵ月の娘・おタマを連れて街を歩いていると、色んな方が「あらっ、かわいいわね〜」と声をかけてくださいます。私としても おタマはたいへん可愛いと思っているので、ついつい、
「私もそう思います!」
とか、
「ええ、私が産みました(キリッ)」
と言いたくなるのをぐっとこらえて、ニコニコと受け答える日々です。
でも、改めて…「可愛いわねえ」と言ってもらったとき、何と答えるのが良いのだろうか? と、今日ふと考えてしまいました。いつもは「ありがとうございます」と言っているのですが、別に私が褒められたわけじゃないしなあ。「えへへ…」とヘラヘラしてみたり、「おタマちゃん、可愛いって。よかったねえ」と言ってみたりもしますが、おタマは褒め言葉をいただいていることなどつゆ知らず、最近激しくなってきた人見知りを発動させて「ガルル…」と威嚇していたりするので、その場をどう繕ったものか、ちょっと考えてしまいます。まあ、あんまり深く考えなくてもいいことなのでしょうけれど。
さて、昨日の続きです。twitterでバズっていたロシア語広告について。
ロシアのバーガーキングの広告は色々と『やらかしてくれる』らしい「あらゆる国で飛ばしてる」「全力で喧嘩を売っていく」 - Togetterまとめ
このバーガーキングの広告について、たぶんどこにも需要はありませんが、私がおもしろいと思ったので逐語訳・品詞分解してみます。
まず、この広告、隣のマクドナルドの広告に対するツッコミが含まれているので、マクドナルドの方を先に見てみましょう。
купи обед с липтон и получи очки в подарок
食事と一緒にリプトンを買って、メガネのプレゼントをもらおう
купи、получиは、完了体動詞купить(買う)、получить(受け取る)の単数命令形。
обедという語は、辞書では「午餐、ディナー」となっているので、昼食にも夕食にも使える単語ということですね(わざわざ午餐と書かなくても、昼食って言えば…と思ったのですが、ひょっとして、午後に食べないとобедでないのだろうか。)。ここでは動詞купитьの要求で対格になっています。
с+造格名詞で「〜とともに」ですが、 липтон(リプトン)は外来語なので無変化のまま"с липтон"と接続しています。
очкиは「眼鏡」、二つのレンズがくっついているので常に複数形の名詞(英語やスペイン語でも複数形)。обедと同じく対格。このケースでは、サングラスをさすと思われます。
в подарокは、в+対格の形で「プレゼントとして」という意味ですね。
で、このマクドナルドに対して、バーガーキング様より辛辣な一言。
КАКИЕ ОЧКИ? ЭТО ПИТЕР, ДЕТКА!
メガネだって? ここはピーテルだぜ、ベイビー!
この一言とともに、マクドナルドの広告を指差して呆れているような男性の写真が載せられていることが、皆さん面白がっておられるポイントなのですね。
まずкакиеという語ですが、これはкакой(どのような、英語でいうとwhichにあたる語)の複数形(очкиが複数形のため)。直訳すると「どんなメガネ?」となるのでしょうが、「メガネて!! どないやねんw」というニュアンスを出す用法だと思われます。
это питерで「これはピーテルだ」。"это 〜"で「これは〜です」、初歩の初歩で習う構文です。ピーテルというのは、ロシア第二の都市サンクト・ペテルブルクの愛称。この広告が貼られていたのがペテルブルクだということでしょう。
деткаという語は知らなかったのですが、дети(子どもたち)と同語源で「ベイビー」「かわいこちゃん(死語…)」のような意味をもつ、俗語に近いことばのようです。
дождевик в подарок при покупке латте 0.5л
0.5リットルのラテお買い上げにつき、レインコートをプレゼント
дождевикは「レインコート」。ペテルブルクの気候は亜寒帯湿潤気候ですが、夏には雨がよく降るようです。1ヵ月のうち半分以上の日が雨降りだとか。確かに、グラサンかけてる場合じゃないですね。
при покупкеという表現では、前置詞приの要求でпокупка(買い物)が前置格になっています。「〜を買うことで」のようなニュアンスでしょうか。0.5лの"л"は英語のLにあたる文字なので、英語と同じく体積の「リットル」をさすようですね。
楽しくなってきたので、上記のまとめに載っていたもうひとつの広告も分析してみましょう。これも同じくマクドナルドを揶揄しているバーガーキングの広告。懲りませんねえ。(写真は無断転載になっちゃうので載せませんが、まとめサイトをごらんくださいな)
настоящие бургеры на 20 шагов левее
本物のバーガー、20歩左へ
この広告の真下にはマクドナルド、そして20歩左にはバーガーキングの店舗が…という、あからさまに嫌がらせをしているような看板。こんな看板を掲げても問題になるわけでなく、むしろみんな面白がっているというのが、なんともロシアらしいというべきか…。自分がマクドナルド側であっても、こういうジョークを受け流せる心の余裕を持っていたいものですな。というか、マクドナルドの宣伝にもなっているということかしら。
「本物の」という意味の形容詞настоящийは、бургеры(ハンバーガー・複数)に合わせて複数形になっています。
на 20 шагов(20歩で)、「一歩」を表すшагが、20という数詞の要求で複数生格шаковになっています。
левееは「左の」をあらわす形容詞левыйの単一比較級。「より左に」という意味ですね。
ロシア語としては基本的な内容ばかりでしたが、こうして改めてロシア語の表現を分析してみると存外に楽しかったですし、勉強になりました。またロシア語素材を引っ張ってきて、なんかやりたいと思っています。ロシア語は名詞も形容詞も文中での役割に応じて格がどんどん変わっていくので、語そのものを見ただけではどの格かわからず、つまりその語の基本形がわからないため、辞書を引いても意味がつかめないことが多々あります。こうした品詞分解の訓練を積み重ねることで、各々の語の役割をつかみ、読み取りの力をつけていきたいものです。
もしロシア語の堪能な方が見てくださっていたらお恥ずかしい限りですが、何か間違いがありましたら遠慮なくコメントでご指摘くださいませ。
では、また近いうちにお会いしましょう。