かあさんは雨女

語学と育児、その他いろいろ。

日本人の働き方のヤバさ、公立学校教員の視点から。〜その①〜

こんにちは。

今回は語学の話はお休みして、気になった話題を取り上げてみます。

 

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日本の労働者の働き方のヤバさ。

私も常々気にしているテーマだけに、色々と考えさせられました。今回は、日本で働く公立学校教員(育休中ですが)としての視点を交えて、この問題について考察してみます。

 

この記事の内容についてはリンク先を読んでいただきたいのですが、かいつまんで言うと、「欧州諸国の人々にとって日本人のイメージはもはや、低賃金で長時間労働でも喜んでていねいな仕事をしてくれる、便利な労働力というもの」だという主張。この記事によると、アメリカに住んでいる人も日本に対して同じイメージを持っている、ということですが、短期とはいえオーストラリアでの生活を経験したことのある私としても、おおむね同じ意見です。

欧米を含む諸外国(乱暴なくくりですが、日本以外の多くの国がそうだと思うので、あえてこの言い方をします)では、

 

「働くときは、給与や待遇に見合った働き方をする。ていねいな仕事をしてほしければ、待遇を良くしなければならない。」

 

というのが常識です。ところが日本では、

 

「給料が低かろうが、待遇が悪かろうが、仕事に対して手抜きをしてはならない。生活が苦しくても、残業が多くて辛くても、我慢して働き続けるのが素晴らしいこと」

 

という考え方が一般的です。その結果、無理な働き方をして精神を病んでしまったり、過労死をする人が後を絶たず、社会問題になっていますね。

 

また、日本では「休みを取るのは悪いこと」というような発想もまだまだ根強いです。欧州諸国だと、従業員に有給休暇を全て消化させないと企業に対して罰則がでたり、週あたりの労働時間上限(だいたい40時間?)があって、それより多く働かせてはならないという法律があったりしますが、日本ではそのあたりがガン無視されています。私も教育現場で働いていて、有給休暇が確か年20日ありましたが、一年目は休暇の取り方もよくわからなくて一年間で0.5日しか取りませんでしたし、その後も年5日も取っていないと思います。

 

更に、日本では「体調を崩したりしたときに困るから、有給を残しておく」という人も多いですが、欧州では「カゼをひいて休む」などというときに有給を消化するのはおかしいので、有給とは別に病気休暇(その間も給与は満額支給)が設定されている場合がほとんどだそうです。日本の会社では、なぜか「カゼをひくのは自己責任だから、有給を使って休む」とか、さらには「カゼをひいても、休むと迷惑をかけてしまうから、無理して出社する」みたいなケースも多いですよね。そこまでして「頑張って働かないといけない」というような、強迫観念のようなものすら感じます。

 

また、多くの自治体では女性の職員に「生理休暇」というものを与えています。文字通り、月一回、生理が重い日には休んでもいいよ、というもの。ただ、私はこの「生理休暇」というものを使ったことがないし、使っている人も見たことがありません。休みを取ったって周りに負担がかかるし、その日の仕事を別の日にやらなきゃいけないだけだから、意味がないんです。ですが、休暇を与えている側としては「休暇があるのに、あいつら使わないで勝手に仕事してら」という理屈になるわけです。休暇があるなら、きちんと使われているか確かめるのも役目のうちなのに、です。おかしな話です。

 

ここで、日本の公立学校業界の話をします。

もう広く知れ渡っていることですが、日本の公立学校は、とんでもないブラック労働を教員に強いています。まさに、上記リンクで触れられている「日本の労働者の働き方のヤバさ」を代表するものだと思います。以下にその理由をつらつらと挙げてみます。

 

 

①授業作り以外の業務量がものすごく多い

 

教師の仕事の本分は、授業です。子どもに勉強を教えたいから教師になる。当たり前の発想ですよね。私も勉強が大好きで、学ぶことの楽しさを子どもたちと共有したくて教師になりました。

ところが、実際に教育現場で働いてみると、とにかく授業や授業準備以外の業務量が多い。とてつもない量です。

先に教員の勤務時間を示しておくと、私がいた学校では、8時15分開始、16時45分終了でした。1日の授業が終わり、掃除やショートホームルームを含めて、生徒が下校するのは16時前後になることが多いですが(このあと部活が始まるのはまた別のお話)、残り45分ではとうてい終わらない量の業務が次から次へと押し寄せます。

(そもそも、この45分で明日の授業の準備をしろというだけでもムチャな話ですが…)

以下にその例を挙げます。

 

教育委員会から無数に降ってくる各種調査

「中学生の生活習慣に関するアンケート」「いじめアンケート」「薬物濫用に関する調査」…などなど、とにかく「お上」から降ってくる調査書類がものすごく多いです。こういうアンケートが降ってくるたびに、ホームルームで生徒に配布して答えさせ、それを集めて各項目ごとの答えを集計し入力。自由回答のものがあれば、それも一言一句残らずパソコンに打ち込み。これ、すべて教員の仕事です。教員自身に色々聞いてくるアンケートも含めると、本当に膨大な量です。事務員は、私の経験では各校に1人か2人しかいないことがほとんど(中学の場合。高校はもう少し多いかも)で、いつも学校全体の事務処理に追われておられるので、とても頼むことなどできません。

また、中学3年生になると、年に何度も進路希望調査が行われますが、第1希望〜第3希望まで、全ての生徒についての情報を入力し、志望校ごとの一覧表を作成したり、成績順に並べ替えて資料を作ったりするのも、すべて教員がやります。こういう作業が立て込んでくると、「私はホッチキスを留めるために教員免許をとったのだろか…」と、本当にむなしい気持ちになってきます。

 

・長引く会議(特に行事前)

学校には職員会議というものがあります。これは勤務時間内に終わるよう設定されていることが多いですが、上に書いた生徒下校後の大事な大事な45分間を、ここで使い切ってしまうわけです。終わったらすぐ退勤〜♪というわけにいかず、そのあとで、ここに書いたその他もろもろの業務に追われていくのです。

 

このような定例の職員会議は、だいたい月に1回程度だと思いますが、これ以外にも色々な会議があります。特に多いのは学年会。学年ごとに、直近の行事について話し合ったり、生徒指導案件を共有したりする会議です。特に修学旅行や林間学校などの前(といっても半年くらい前から計画を始めることが多いので、常に何かしら行事の話をしているわけですが)には、班別学習でどの班がどこを回る予定かとか、どの生徒がアレルギーを持っているからどの食事でどの食材を除去するかとか、新幹線の座席をどのように配置するかとか、こういう細か〜いことを繰り返し繰り返し議論します。

私はまだやったことがないですが、宿泊行事の担当者になっちゃったりすると、本当に悲惨です。忙殺されます。学校によっては百人以上の生徒を抱える大旅行について、旅行会社の担当者さんと打ち合わせをし、綿密な計画を立てるという責任が両肩にのしかかってきます。教員は旅行エージェントまでやらなきゃいけないのか?と目を疑うばかりの仕事量で、授業なんかそっちのけで宿泊行事成功のため、全力を注がなければなりません。

 

この他にも、「○組の○○さんがガムを学校に持ってきていた」とか、「×組の××君がゲームセンターに入り浸っていて地域から苦情が来た」などといった雑多な話題もいちいち持ち出して、どのように指導していくかを学年で話し合わなければなりません。本当に、勉強だけ教えさせてくれよ…とため息をつきたくなるような事例が絶えないのです。

 

・存在しない昼休み

公立学校教員は地方公務員です。当たり前ですが公務員にも労働規定はあり、1日の労働時間のうち45分の休憩時間を確保しなければなりません。これ、書類上では「昼休憩」としてしっかり設定されているのですが、実際には教員に昼休みは存在しません。昼休みは昼食指導といって、生徒がお弁当や給食をお行儀良く食べているか、目を光らせなければなりません。担任を持っていなくても、給食準備や片付けで生徒がきちんと係分担できているか、廊下でトラブルが起こらないか、見張っていなければならないのです。自分の分の昼食は秒でかきこみます。その昼食すら、生徒同士のケンカの仲裁や他の業務の消化などで、満足に取れないこともあります。

 

また、生徒には昼休みがありますが、この昼休みの時間に教員が休憩できるわけではありません。昼休みを利用して生徒が部活をしたり、委員会を開いたりする場合、教員はそこについて監督しなければなりません。また、昼休みは、生徒が学校生活で最も開放的な気持ちになる時間。言い換えれば、ケンカや小競り合いなどの問題が起きやすい時間でもあります。生徒が学校で何か問題を起こすと、それはすべて教員の責任ということにされてしまうので、ここでも教員は「自主的に」廊下に張り付いて生徒を見張っています(別に怖い顔をしているわけではなく、生徒と談笑したり教室で仕事をしたりして、生徒のそばに極力いるようにします)。

 

「そんなことまでしなくても、職員室で休んでてもいいやん…」と思われるかもしれませんが、昼休みに教師のいない教室でイジメでも発生しようものなら「どうして先生が見ていてくれなかったんですか!!」と各方面からクレームが押し寄せること必至なのです。世知辛い世の中です。教員たちは、自分の身を守るために、「あくまで自主的に」昼休みを犠牲にしているのです。

 

・書類を作るときの「謎の表記ルール」

教員は公務員なので、公的な書類を作成することもあります。たとえば、指導要録といって生徒一人ひとりの個人情報を記載した書類や、高校入試のときに提出する調査書、教育委員会の偉い先生方に見てもらう研究授業の指導案(授業の設計書のようなもの)、などです。

こういう書類を作成して管理職に提出、チェックをもらうわけですが、そのときに本っ当〜にどうでもいい、細かい細かいルールに則って書き直しを命じられることが多いのです。たとえば、「この生徒は『英検3級』取得と書いているが、こちらの生徒は漢数字で『英検三級』になっている。どちらかに統一せよ」とか、「段落はじめの一字下げる部分が、五行目のココだけ半角になっている。体裁を整えよ」などなど。自治体によっては、漢字の使い方にもいちいちルールが決められていて、「〜すること」の「こと」を漢字で「事」と書いてはいけないとか、そんなこと内容に関係ある!? とウンザリするようなルールが山ほどあります。こういうルールが厳守されることで、チェックする側も、される側も、本当に無意味に神経を磨り減らされます。いったい何のために、誰のために…と自問自答する日々です。

 

・ペンキ塗りや花の水やり、そうじなどの「自主的な仕事」

これは教員の仕事を始めて本当に、本当にびっくりしたのですが、校舎の壁のペンキを塗るのも教員の仕事なのですよ!! 信じられますか? まあ学校によるでしょうけれど、私のいた学校はそうでした。年に1回、汚れた校舎の壁を、感謝をこめて真っ白(他の色のこともありますが)に塗る。このペンキの調達、ローラーやハケの掃除、マスキングテープの調達まで、すべて教員の仕事でした。もう教員の仕事をバカにしてますよね。

 

他にも、特に若手教員に対してですが、鉢植えの花に水をやったり、朝ほかの先生よりも早く来て職員室を掃除したり、といったことを「やらなければならない」という空気があります。もう、こうなると教員でも何でもない、ただの何でも屋さんです。一応言っておきますが、用務員さんはいますよ。でも、この用務員さんに先駆けて若手教員がやるのが「えらい」そうです。私にとっては、用務員さんの仕事を奪っているようにしか見えませんでしたし、勤務開始より早く学校に行くなんて嫌だったのでやりませんでしたが、やってる若手さんがほとんどでした。毎日お疲れさまです。

 

・その他、生徒指導事項

とある事例を紹介します。

勤務時間もとっくに終了した19時。当然のように職員室に残って仕事をしていると、警察から電話がかかってきます。いわく、「そちらの学校の○年○組の○○君が、コンビニで万引きをした」とのこと。こういう電話を受けたら、担任は「へえ、そうですか。教えてくださってありがとうございます」というわけにはいきません。速攻で現場に向かい、指導にあたります。もちろん親にも連絡がいきますが、学校も連絡を受けたからには、現場に向かわなければならないという謎ルール。生徒と一緒にお店に謝り、警察に謝り、保護者(現場に来てくれないようなネグレクト保護者だったらなお悲惨)と共に生徒を叱り、家に帰し、学校に戻り、学年主任と管理職に口頭で報告をしたのち、報告書を作成し、管理職にチェックを受けるまでがお仕事です。で、ここから明日の授業の準備が始まるわけです(ひえ〜)。

 

万引きの他にも、生徒が家出をすれば保護者と一緒に探しますし、不登校の生徒がクラスにいれば、定期的に家庭訪問をして様子を確認します。いじめで生徒同士がもめれば保護者も交えて学校で話し合いをします。「上履きが隠された」という生徒と一緒に校内をくまなく探しまわったことも数知れず。現代の生徒さんはスマホを持っている子が大多数で、またその大部分の子がLINEをしているので、LINEで仲間はずれにされた、悪口を言われたという事案も後を絶ちません。こういったことが発生すると、携帯電話の中だけで起こったことの事実確認をするという禅問答に近いことをしなければならず、またその都度、学年主任や管理職、ひいては教育委員会につぶさに報告しなければならないので、ものすごく疲弊します。でも、これをやらないと「いじめを隠蔽した!!」とバッシングされますからね。何度でも言いますが、世知辛い世の中です。

 

ずいぶん長くなりましたが、ここまでが「教員の働き方のヤバさその① 授業作り以外の業務量がものすごく多い」です。

 

「授業の空き時間に仕事すればいいんじゃ?」という声もあるかと思いますが、私の経験ではそれでも足りないことが多く、また先生によっては「授業がぎゅうぎゅうに詰まっていて空き時間がほとんどない」という状況もあります。それと、学校によっては空き時間の教員で校舎の見回りをするというルールを設けていることもあるので、忙しさに変わりはありません。

 

こういった忙しさ、仕事内容のハードさから、全国で毎年約5000人の教員が、精神疾患のため休職に追い込まれています。異常です。が、現時点では、ほとんど何の対策もなされていません。

 

さて、ここから「教員の働き方のヤバさその②」に続きますが、ものすごく長くなったので今日はここまでにします。明日は、部活動や教員の待遇についての話をします。

 

では、おやすみなさい。 

 

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