かあさんは雨女

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名前だって変幻自在。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その②〜

こんにちは。

語学オタクの新米(娘も1歳になったし、そろそろ新米も卒業…?)かあさんが、ロシア語とスペイン語と英語を楽しく学んでおります当ブログ。

今回は、DVD「チェブラーシカ」のスクリプトを使ったロシア語学習、第2回です。

(第1回の記事はこちら。)

 

とつぜん現れた「正体不明」の生き物、チェブラーシカ。電話ボックスを住処に、リサイクルショップの見せ物(!)としての仕事を始めようというところまでが、前回の内容でした。今回は場面が変わり、ワニのゲーナの登場です。

 

舞台は動物園。ワニの檻にワニさんが座っております。

 

ナレーション:В городе жил крокодил по имени Гена.(町に、ゲーナという名のワニが住んでいました。)

А работал в зоопарке. Крокодил.(動物園で、ワニとして働いていました。)

 

ひとつだけ、по имени 〜で、「〜という名前の」。

これ以外は、基本の構文なので、特に注釈はいらないと思います。

 

余談ですが、ロシア語って語順が自由ですねえ。上の一文目では、「町に、住んでいた、ワニが、名前を、ゲーナという」みたいな順番になっています。主格、前置格など、文章の中での単語の役割が格で表現できちゃうので、英語のように「主語が最初にこないと意味わかんない」という事態にならずに済むわけです。主格になっている単語を主語だと考えればいいわけですからね。格変化を覚えるのが大変! なロシア語ですが、考えようによっては語順に縛られず、自由に言いたいことを表現できちゃう言語だなあ、と改めて感じます。

 

さて、「動物が動物園で働いている」というのもユニークな表現ですが、終業時刻を報せるものらしいチャイムが鳴るやいなや、ワニのゲーナはコートを着て帰り支度を始めます。

 

えっ、服着るの?

それに二足歩行してますけど??

 

動物園の門には、ライオン、クマなど、色々な動物がお洋服を着て次々と現れ、スタスタと2本の足で家路へと向かいます。うーん、動物園での動物らしい様子は「お仕事」で、おうちでは人間と同じような生活をしているようですね。こういう不思議な世界観が、なんともユーモラスで魅力的な作品です。

 

さて、家に帰り着いたゲーナ。

しばらく退屈そうに色んなおもちゃをいじったあと、おもむろに便せんを取り出して何事か書きつけはじめます。

 

ゲーナ:Молодой карока... нет. Кракодил хочет завести себе друзей.Точка.

(わかい、カロコ…いや、クラコジル(ワニ)が、ともだちを欲しがっています。まる。)

 

ゲーナ、家でひとりは退屈だから、ともだちが欲しかったんですね。募集の紙を作っているようです。

завести себе друзейという表現が耳慣れないと思ったのですが、辞書によると、завестиは「連れてくる、導く」というような意味だそうです。公的文書(?)だから、三人称を用いて「ともだちを自分自身に連れてきたがっています」と、少し距離を置いた表現にしているのでしょうか。

друзейはдруг(友だち)の複数対格形。活動体なので生格と同じ形ですね。

точкаは文の終わりに打つ点、いわゆるピリオドのこと。言いながら書くのがかわいいです。

一枚書き終わると、次の紙に取り掛かるゲーナ。どうやら、町中にこの紙を貼ってまわるつもりのようです。

 

ところ変わってチェブラーシカの住処である電話ボックス。ひとりぼっちで、まわるコマをじーっと見つめるチェブの寂しげなロングショットのあと、電話ボックスのドアに友だち募集用紙が貼られているのを見つけます。チェブはゲーナと友だちになれるのかな?

 

そしてまた場面転換。こんどは悲しそうにすすり泣く犬が登場。迷い犬でしょうか。かわいい女の子・ガーリャが歩み寄ります。

  

ガーリャ:Не плачь. Пойдём со мной.(泣かないで。私と行きましょう。)

 

платьは、動詞плакать(泣く)の単数命令形。不規則変化です。

完了体動詞пойтиの一人称複数形пойдёмで、「行きましょう」という勧誘の形になります。

勧誘の形にしたいのが完了体動詞なら一人称複数形、不完了体動詞なら不定形を使います。私はいつもごっちゃになるので、不完了体が不定形、「不・不」で覚えています。

 

犬ちゃんと友達になったガーリャ。ゲーナの友だち募集文を見つけ、ゲーナのおうちに向かいます。

 

ガーリャ:Это вам нужны друзья?(友だちを欲しがっているのは、あなた?)

ゲーナ:Друзья! Мне!(友だち! 私だよ!)

ガーリャ:Галя.(ガーリャです。)

ゲーナ:Гена. Кроколил.(ゲーナ。ワニだよ。)

ガーリャ:У вас есть молоко?(ミルクはありますか?)

ゲーナ:Конечно, есть!(もちろん、ありますよ!)

 

初めて会う相手なので、вам, нужныと複数形(=丁寧形)を使って会話しています。

下から2つめのу вас есть〜という構文、NHKの「テレビでロシア語」講座にも頻繁に出てきた形でして、初めてこのDVDを観たときに聴き取れたのが嬉しかったなあ。молоко(ミルク)も基本単語ですね。

 

 

ガーリャ:Покоримте Тобика.(トービクにあげてください。)

ゲーナ:Тобик!(トービク!)

 ガーリャ:Я пока приберу - у вас токой беспорядок.(私は今のところ、そうじするわね —こんなに散らかっているもの。)

 

покормитеという語の不定形は恐らくпокормитьなのでしょうが、手許の辞書には載っていませんでした。ただ、кормить(餌や食事を与える)という語があるので、「ちょっと〜する」という意味になる接頭辞поをつけて「ちょっとあげる」となるのではないかと思います。

покормите Тобика(トービクにあげる)、Тобикという犬の名前が対格に変化しています。固有名詞も平気で格変化するロシア語の妙。いつも思うのですが、初めて聞いた名前が格変化していて、よくパッと元の名前を類推できるなあ。慣れなんだろうなあ。

приберуはприбрать(整頓する、きれいにする)の一人称単数形。

беспорядокは「混沌、散らかっていること」だそうです。ハッキリ言うものですね。

 

そこへ訪ねてくるチェブラーシカ。道すがら、花なんか摘んじゃったりして(でも結局持っていかなかった…このあたりの描写も細かい)。ゲーナの家のドアをノックします。

 

ゲーナ:Кто там?(誰ですか?)

チェブ:Это я - Чебурашка.(ぼくです…チェブラーシカです。)

ゲーナ:Чебурашка...チェブラーシカ…)

ガーリャ:Кто вы такой?(あなた、いったい誰なの?)

チェブ:А я не знаю.(わからないの。)

 

このКто (Что) 〜 такой?という構文、「〜とは、一体?」というニュアンスが出る便利な文です。一回聞いてもわからなかったり、詳細の説明を求めたりするときに使えますね。

 

ガーリャ:Вы, случайно, не медвежонок?(あなた、ひょっとして、小熊じゃないの?)

チェブ:Может быть, не знаю я.(そうかもしれない。ぼくには、わからない。)

ゲーナ:Сейчас, сейчас, посмотрим. Так, «Че»... чай, чемодан, чебуреки...

(今、ちょっと見てみよう。えーと、「チェ」…チャイ(お茶)、チェマダン(スーツケース)、チェブレキ…)

Странно, никаких Чебурашек нет.(おかしいな。どんなチェブラーシカも載っていない。)

 

случайноは「ひょっとして、偶然に」。случаться(起こる、巡り合わせる)に通じる語でしょうか。

медвежонокは「小熊」。ふつうの熊はмедведьです。余談ですが、ロシアの元大統領メドベージェフ(медведев)さんや、フィギュアスケーターのメドベージェワ(медведева)さんの名字は、この「熊」から来ているそうですね。日本の名前でいうと「熊田さん」みたいな感覚でしょうか。

может бытьで「〜かもしれない」、これも便利なフレーズ。

сейчасは「今」という意味の語ですが、ロシア映画など観ていると、「ちょっとまって、いま〜するから」というニュアンスを出すのに、よく"сейчас, сейчас"という表現が使われているように思います。

律儀に辞書で「チェブラーシカ」を調べるゲーナですが、どうやら載っていないようです。ちなみに「チェブレキ」はクリミア・タタールの料理чебурек(チェブレク)の複数形で、味付けした羊のひき肉の揚げ餃子のようなものだそうです。おいしそうです。

ЧебурашекはЧебурашкаの複数生格形。「辞書にない」という否定の構文なので、否定生格になるのはわかるのですが、なぜ複数形なのでしょうか。Чебурашкаを一般名詞ととらえて、「たくさんあるはずのチェブラーシカが一つも載っていない」ということなのかしら。

никакихはникакой(どんな〜も)の変化形。Чебурашекに合わせて複数生格になっています。

 

チェブ:Значит, значит, вы не будете со мной дружить?(ってことは、てことは、あなたたちは僕と友だちにならないってこと?)

ガーリャ:Почему? Будем, будем! Я научу тебя вязать на спицах.(どうして?なりましょう、なりましょう!私はあなたに、編み針で編む方法を教えるわ。)

ゲーナ:А я - пускать мыльные пузыри.(では私は、石けんでシャボン玉を作ってみせよう。)

 

значитはзначить(意味する)の三人称単数形ですが、慣用的に「ということは〜」という意味でよく用いられます。

дружитьは「友だちになる」という意味の動詞ですね。

научуの不定形はнаучить(教える)。вязать на спицахで(編み針を使って編み物をする)となります。道具を使う表現ですが、с+造格ではなく、на+前置格なのだなあ。

пускатьという表現も辞書には見当たらないのですが、ぐぐってみると「動かす、放つ」というような意味がヒットします。мыльные пузыри(せっけんで作るシャボン玉、複数形)を作って放つ、というニュアンスにふさわしい動詞なのでしょうね。

 

ぶじに友だちをつくることができたチェブラーシカ。よかったね。

ところが、このあと、いじわるばあさんシェパクリャクの登場!

さあ、どうなる!?

 

と、今日のところは、ここまでにしておきます。

次回をお楽しみに〜。