建てて建てて… 建て終わった! 〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その⑥〜
こんにちは。
秋が少しずつ、深まってきていますね。北陸でも、特に夜は冷えるようになってきました(そういえば台風も来てますねー)。我が家の1歳児おタマ、見事に鼻風邪を引いております。
1週間くらいずっと、水バナを垂らしてズビズビ言っておりまして、本人は特に気に留める様子もなく遊んでいるのですが、お世話をする側としてはやはり気になるので、折に触れて鼻吸い器で鼻水を吸い取りまくっております。
この「鼻吸い器」、乳幼児の鼻に管を突っ込んで思いっきりバキュームできるようになっている代物なのですが、やられる方はたまった物ではないらしく、いつも全力で嫌がって転げ回ろうとするのを押さえるのに苦労します。
本人がティッシュで上手に「ちーん」できるようになれば、だいぶ楽なんでしょうけれど…。
のっけから鼻水の話などしてしまいました。
今日は、人形アニメ「チェブラーシカ」を使ったロシア語学習、第6回目をお送りします。
前回までの記事はこちら。
チェブラーシカの名前の秘密。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その①〜
名前だって変幻自在。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その②〜
いたずらで宣戦布告?〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その③〜
独りぼっちの誰かのために。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その④〜
バナナではなく、スイカの皮を。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その⑤〜
友だちがいない人のために、「友だちの家」建設をがんばってきたゲーナ達。いよいよ、完成です。
ナレーション:прошло десять дней, и домик был готов.
(10日が過ぎ、家ができました。)
прошлоは「通り過ぎる、経過する」という意味の動詞пройтиの中性形過去ですね。
деньという語は数詞десять(10)の要求で、複数生格днейになっています。
готовは、「用意できた、準備できた」という意味の形容詞готовыйの短語尾男性形です。
しかし、たった10日で家を建ててしまうとは…。
やるな、ゲーナ組…!!
きれいな絵で飾られた家には、"домик друзей(友だちの家)"の文字。
完成のセレモニーでしょうか、ゲーナがテープカットをすると、上からお花が降ってきます。どうやら、いたずらばあさんのシャパクリャクが仕込んだようです。
お花にはカードが添えられていて、筆記体で少し読み辛いですが"Привет от Шапокляк!(シャパクリャクより、あいさつ!)"と書かれています。
приветという語は、それだけで「こんにちは」というあいさつに使われますが、名詞として「あいさつ」という意味ももっています。
いじわるばかりしていたシャパクリャクですが、皆とお近づきになりたいようです。いじらしいですね。
ゲーナ:Сейчас Чебурашка скажет вам речь.
(では、チェブラーシカがあなた達にスピーチをします。)
チェブ:Мы строили - строили, и, наконец, построили! Ура!!!
(僕たちは、建てて、建てて… そしてついに、建て終わりました! やったー!!)
「話す」という意味の動詞скажитьに、「スピーチ」という意味のречьを付けて「スピーチをする」と言うことができるんですね。
このチェブラーシカのせりふは、完了体と不完了体の違いを学ぶのにとてもいい例だと思います。
「建てている」という、進行している状況をあらわすのが、不完了体のстроить。
「建て終わった」、つまり完了した状態をあらわすのが、完了体のпостроить。
наконецは「ついに、ようやく」という意味でよく使われる語ですね。
ура!!は、「やったー!」「ばんざい!」という喜びや興奮を表現するのに使われる語ですが、何も知らずにいきなり「ウルァーー(巻き舌)!!」と言われたら、日本人としてはビックリしちゃいそうですね(笑)。知識って大事です。
ゲーナ:А сейчас, мы будем зописывать всех, кому нужны друзья.
(では、私たちは友だちが必要な人(の名前)を、全て書き留めます。)
キリン:Зачем записывать, мы уже все подружились.
(なぜ書き留めるの、私たちもう皆、友だちになったじゃない。)
おじさん:Да-с, мы действительно подружились... на стройке.
(そうですよ、本当に、私たちは仲良くなりましたね… (家を)建てることで。)
всех, кому нужны друзьяは、関係代名詞ктоの与格形комуが使われていて、「その人に友だちが必要だという人、すべて」という意味になります。
再帰動詞подружитьсяは「友だちになる」。
おじさんが言っている"да-с"が気になりました。調べてみると、да-сударьの略で、сударьとは目上の人を敬意を込めて呼ぶ語。つまり、"да-с"は英語でいうと「イエッサー」「イエス、マム」みたいな意味になるんだそうです。目上の人相手というわけではないでしょうが、礼儀正しい人なのかな? と思い、敬語で訳してみました。
友だちをつくるために友だちの家を建てたけど、友だちの家を建てる作業の中で友だちができてしまった…という、矛盾(?)が起きてしまいました。
チェブ:Что же это получается - строили мы строили, и всё напрасно?
(これはどういうこと、僕たちは建てて建てて、そして全部、むだになったの?)
ガーリャ:И совсем не напрасно, это же вы их подружили.
(全く、むだなんてことないわ。あなたたち、彼らを友だちにしたんだから。)
А здесь будет жить Чебурашка.
(それで、ここには、チェブラーシカが住む(といい)わ。)
Ведь он живет в телефонной будке. Правилино?
(ほら、彼、電話ボックスに住んでるのよ。でしょ?)
ゲーナ:Правилино.(そうだね。)
получитьсяは「〜という結果になる、判明する」。"Что полутилось?"で、「何が起こったの?」という意味でよく使われるフレーズです。
вы их подружилиで、「彼ら(キリンさんやおじさんたち)を友だちにする」。このподружитьは手許の辞書に載っていませんでしたが、恐らくдружитьの完了体で「(誰かと誰かを)友だちにする」という意味ではないかと思います。そういえば、先ほど再帰動詞のподружиться(友だちになる)という語が出てきましたね。
ведьは「ほら、わかるでしょう?」と相手に呼びかけるときによく使われます。
チェブ:Нет, давайте отдадим этот дом детскому садику.
(ううん、この家を譲って、幼稚園にしようよ。)
А я там буду работать игрушкой, если меня возьмут - я же неизвестно кто.
(で、僕はそこでおもちゃとして働くよ、もし僕を雇ってくれたらだけど…僕、正体不明の誰かだけど。)
отдадимは、不規則変化動詞отдать(返す、譲る、捧げるなど)の一人称複数形。人称変化のパターンとしては、基本の動詞датьと同じですね。
ここで、私自身の復習も兼ねて、датьの人称変化をおさらいしておきましょう。
дать- дам, дашь, даст, дадим, дадите, дадут
うーん、いつ見ても、変な活用です。でもよく使う語なので、しっかり覚えておきたいですね。
детскому садикуは、「幼稚園」детский садикの与格形。私は「幼稚園」といえばдетский садだと思っていましたが、дом(家)がдомик(小さな家)になるのと同じ理屈で、「小さな幼稚園」としてдетский садикという語が使われているのだと思います。
работать игрушкой、работать+造格形で「〜として働く」なので、「おもちゃとして働く」ということ。なんだかへんな感じですが、愛らしいチェブラーシカは確かに、おもちゃとして愛でてもらうことが適任であるような気もします。
ただ、チェブは「正体不明」と動物園に入れてもらえなかったことを気にしていて、"если меня возьмут..."なんて言っています。еслиは「もしも〜なら」、возьмутは「取る、連れていく」という意味のвзятьの三人称複数形なので、「彼ら(幼稚園関係者)がもし、僕を連れていってくれるなら…」という弱気な発言なのです。
неизвестноは、「有名な」という意味の副詞известноに否定の接頭辞неがついているので、「誰も知らない」となります。
ゲーナ:Как это - неизвестно кто? Очень даже известно.
(何だって、正体不明の誰か? とても有名ですらあるのに。)
ガーリャ:Мы за тебя попросим.(私たち、あなたのために、お願いするわ。)
みんな:И мы. И мы тоже попросим.(私たちも。私たちも、お願いしよう。)
дажеは「〜さえ、〜すら」という意味なので、「正体不明なんてとんでもない! むしろ有名だよ!」というニュアンスを表現する語となります。
за+対格形で、「〜を守って、〜のために」。チェブラーシカのために、この家に住めるよう皆で嘆願しよう、ということですね。попроситьは「頼む」という意味の完了体動詞。完了体は、現在形を使うと「これから〜する」という未来の行動を表すことになるので、ここでは「私たちがこれから頼みに行こう」という意味で使われています。
皆が、チェブラーシカのために、動いてくれると言っています。
どこにも行くところがなくて、電話ボックスに住むしかなかったチェブラーシカ。捨てられたオモチャみたい、なんて言われて、ひとりぼっちだったチェブラーシカ。優しい友だちがたくさんできて、良かったね。(号泣)
最後にゲーナが、離れところからこっそり見守るシャパクリャクばあさんを発見します。
シャパクリャク、チェブに何やら書かれた紙を渡しました。
ゲーナ:Смотрите!(ごらん!)
手紙:Я больше не буду. Шапокляк.(私、もう、(いたずらを)しません。シャパクリャク。)
смотритеは「見る」という意味の動詞смотритьの複数命令形です。
большеは、元は「大きい」という意味の形容詞большойの比較級で「より大きい」という意味の語ですが、ここから転じて「これ以上は、もう」という意味でも使われます。
(余談ですが、あの有名なボリショイ劇場Большой Театрの名前は「大きな劇場」という意味ですね。)
Я больше не буду.は、直訳すると「もう、これ以上、しません」という意味になり「何を?」と聞き返したくなりますが、シャパクリャクがこれまでしたことを振り返ると「いたずら」以外にないわけで(笑)、これ以上言う必要がないので省略されています。
いたずらでゲーナ達を困らせてやろうと思っていたシャパクリャク、仲良くなったみんなの姿を見て、自分も仲間になりたいと素直に思えたようです。
なんとも微笑ましい終わり方です。万事解決して、めでたしめでたし。
(ま、この後のエピソードを見ると、これからもバンバンいたずらしまくっているシャパクリャクさんですが…。)
さて、ここまでで、上映時間20分のショートフィルム"Крокодил Гена(ワニのゲーナ)"の訳と解説が終わりました。
チェブラーシカのDVDには、「ワニのゲーナ」を含めて、全部で4つのエピソードが収録されています。
今までどおりカメのようなスピード&更新頻度ですが、これらのエピソードを完全制覇すべく、少しずつ前に進んでいきたいと思います。次のエピソードは、ずばり"Чебурашка(チェブラーシカ)"。不器用ながらも、人の訳に立ちたい! と、チェブラーシカが奮闘します。私もロシア語を学ぶ誰かの役に立つべく、というか主に自分自身のためですが、これからも奮闘してまいります。
では、次回は恐らく、9月17日(今日だわ)放送の「ミッフィーのぼうけん」の英語解説をする回になると思います。
またお会いしましょう。