かあさんは雨女

語学と育児、その他いろいろ。

空飛ぶチェブラーシカ。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第二話〉 その②〜

こんにちは。

私は疲れているときや眠たいとき、顔を手で覆うようにこする癖があるのですが、先日朝ごはんを食べながらそれをやっていたところ、1歳5ヵ月の娘・おタマに「ばぁ〜!」と言われました。

私は即座に彼女の意を汲み、そのまま速やかに「いないいないばあ」の動きに移行しました。おタマは嬉しそうに、自分でも顔を手で覆って「ないないない…ばぁ〜!」とやってくれましたよ。(ちょっと前まで「んまんまんま、ばぁ」としか言えなかったのに、進歩!)

娘のかわいさに眠気が吹き飛び…は、しませんけどね(笑)。眠いときは眠いですが、育児は楽しいものです。

 

さて、今日は久々にロシア語の回です。

ソ連時代の愛くるしい短編アニメ「チェブラーシカ」のロシア語を解説するプロジェクト。

前回は短編2作目『チェブラーシカ(邦題:ピオネールにはいりたい)』の第一弾でした。今日はその続きからまいります。

 

前回の記事はこちら。

お誕生日には魔法を。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第二話〉 その①〜

 

※当ブログで実施している「チェブラーシカ」プロジェクトの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ。〜プロローグ〜

 

また、短編一作目『ワニのゲーナ』の訳と解説(全6回)をご覧になりたい方は、この記事のカテゴリ「ロシア語学習」をクリックして各ページに飛んでくださいね。 

 

 

では、本題に入ります。

前回、ワニのゲーナの弾き語りによって、今日がゲーナの誕生日であることが判明しました。降りしきる雨のなか、ゲーナの前に一台のトラックが停まります。

 

配達員:Здравствуйте, здесь живёт крокодил Гена?

(こんにちは。ここに、ワニのゲーナさんはお住まいですか?)

ゲーナ:Да, он живёт здесь. Это я.(はい、彼はここに住んでいます。それは私です。)

配達員:Ну, тогда - распишитесь.(うむ、では…サインをお願いします。)

 

 何かゲーナにお届けものみたいですね。

「彼はここに住んでいますよ、それは私です」とはなかなか回りくどい言い回しですが、一般的な言い方なのでしょうか。不器用なゲーナらしい表現、という気もします。

распишитесьはрасписаться(署名する)の命令形ですね。敬語表現なので複数形になっています。

 

サインをするとき、脱いだ帽子をどこに置こう…とアタフタして、配達員さんに持ってもらうゲーナ。こういう細かい動きが本当に、いじらしくてかわいらしいアニメです。このあと配達員に帽子を持っていかれちゃいそうになって、慌てて回収していましたね。

さて、配達員がトラックの荷台を開けると、中から大きなプレゼントの箱! と、それを運ぶチェブラーシカが登場します。チェブよりプレゼントの箱の方がずっと大きいので、運ぶのが大変そう。

 

チェブラーシカ(以下チェブ):Здравствуй, Гена! (こんにちは、ゲーナ!)

ゲーナ:Здравствуй. (こんにちは。)

チェブ:Поздравляю тебя с днём рожденья!(お誕生日おめでとう!)

ゲーナ:Спасибо, это мне?(ありがとう、これは私に?)

チェブ:Да.(うん。)

ゲーナ:Чебурашка, ты настоящий друг.チェブラーシカ、君は本当のともだちだ。)

 

Поздравляю тебя с днём рожденья!はお決まりの表現、「君の誕生日をお祝いします」つまり「誕生日おめでとう」ということですね。省略して、C днём рожденья!とだけ言ってもOKです。

いちおう細かく見ておくと、поздравляюは動詞поздравлять(祝う)の一人称単数形。с+造格を接続して「〜を祝う」という表現になります。

днём рожденьяは「誕生日」день рожденьяの造格形ですね。

настоящийは「本物の、真の」という意味の形容詞です。

お誕生日をこんな大きなプレゼントで祝ってくれるなんて、君はなんて素晴らしい友だちなんだ! と、ゲーナは感激しています。

だって、ゲーナは前回、友だちがいなくて張り紙で募集していたくらいですものね…。すてきな友だちができて、良かったね。

 

そこへ、ビシッとかっこよく行進する少年たちが通りがかります。

彼らは「ピオネール」。ソ連共産圏の少年団のことで、ひらたく言えばボーイスカウトのようなものです。

ちなみに、この記事を書きながらピオネールについて調べていて初めて知ったのですが、この短編第二話『チェブラーシカ』の日本公開当初の邦題は「ピオネールにはいりたい」というものだったのでした(DVDのパッケージには載ってなかったから気付かなかった…)。

どうやら、今回はこのピオネールがお話に深く関わってくるようです。

 

チェブ:Пионеры...(ピオネールだ…)

ゲーナ:Пионеры.(ピオネールだね。)

チェブ:Самые настоящие. Я бы тоже хотел ТАК ходить.

(ほんとに本物だ。ぼくもあんなふうに行進してみたいな。)

ゲーナ:Xодить? Надо много хорошего сделать, чтобы стать пионером, понятно?

(行進? いいことをたくさんしなきゃ、そうすればピオネールになれるよ。わかった?)

チェブ:Понятно.(わかった。)

 

cамые настоящиеという形容詞句は、ピオネール(пионеры:複数形)を修飾しているので複数の形になっています。cамыйは「最も〜」という最上級をあらわすものだと思っていたのですが、「まさに」という意味で後にくる語を強調するはたらきもあるのですね。

настоящийは先ほども出てきた「本物の」という形容詞なので、「まさに、本物のピオネールだ」とチェブは感心しているわけです。

続いて、チェブの"Я бы тоже хотел ТАК ходить."という台詞。ходитьは不定方向動詞で「歩き回る」という意味ですが、この場合はピオネールの少年達が「行進して」いる様子を表しているようです。チェブは「僕もあんなふうに行進してみたい」と、ピオネールに憧れを抱いているのですね。

そんなチェブに、ゲーナは"Надо много хорошего сделать"とアドバイスします。хорошегоはхорошийの生格形?で「良いこと」という意味、つまり「(ピオネールになるためには)良い行いをする必要があるね」と言っています。ただ、このхорошегоがなぜ生格の形なのかは不明…。сделатьに続くのなら対格になるはずなのですが。

こだわっていては先に進めないので、とりあえず分からないところは置いていくスタンスで続けます。

стать+名詞造格で「〜(職業など)になる」となるので、стать пионером「(そうすれば)ピオネールになれるよ」とゲーナは言っています。

 

気を取り直して、プレゼントを開けるゲーナ。ほどいたリボンを持て余し、くちゃくちゃに丸めてスーツに押し込む動作がまた愛らしいですね。

箱から出てきたのは、ヘリコプターのおもちゃでした。

 

チェブ:Ой, какой красивый!(わあ、すてきだね。)

ゲーナ:красивый.(すてきだ。)

チェブ:Давай его запустим, а?(飛ばしてみよう、ね?)

ゲーナ:Давай.(そうしよう。)

チェブ:Давай.(そうしよう。)

 

давай(те)+動詞を使った勧誘文、以前にも書いたことがありますが、復習です。

 

давай(те)+動詞不完了体の不定

давай(те) +動詞完了体の一人称複数形

 

動詞の体によって、どちらかに決まるのでしたね。わかんなくなったら「不完了体+不定形、つまり不+不」で暗記しましょう。

ここで使われている動詞запустить(飛ばす、打ち上げる)は完了体なので、一人称複数形のзапустимが使われています。

ところで、今回チェブが「ねえ、そうでしょ?」と相手を催促するときに"...а?"という付加疑問を多用しています。日本語だと文の最後に「…あ?」と言われるとガン飛ばされてるのかと思ってビクっとしちゃいますが、ロシア語では普通に使われる表現なのでしょうね。チェブちゃんが言うと特にかわいいです。

 

さて、チェブがヘリコプターのプロペラを回して飛ばそうとしますが、不器用な彼が操るにはどうも危なっかしい…。

 

チェブ:Раз... два... три...(1…2…3…)

ゲーナ:Нет, не так! Вот так надо, держи... 

(違う、そうじゃない! ほら、こうするんだよ、持って…)

チェブ:Депжу.(持ったよ。)

ゲーナ:Крепче!(もっと、しっかりと!)

チェブ:Теперь правильно?(これでいい?)

ゲーナ:Правильно.(いいよ。)

 

すかさず助け舟を出すゲーナ。チェブのために、プロペラの紐を引っ張ってあげています。

「つかむ」という意味の動詞держитьの単数命令形держи、そして一人称単数形держуが出てきましたね。こんなふうに、命令形で言われたことを即座に一人称に活用して「やってるよ」と返せるようになりたいものです。

крепчеは、形容詞крепкий(強く、しっかりと)の比較級で「もっと強く!」という意味。

 

ゲーナに手伝ってもらってヘリコプターは無事に飛びましたが、なんとチェブラーシカ、くっついて一緒に飛んでいってしまいました!

 

ゲーナ:Чебурашка, держись!チェブラーシカ、しっかり!)

 

先ほどдержить(つかむ)という動詞が出てきましたが、ここでは-сяがくっついてдержиться(つかまる)になっています。命令形で「落ちないように、しっかりつかまって!」と励ましているわけです。

 

ヘリは、少し離れたところで無事に着陸。チェブ、きょとんとしています。

 

ゲーナ:Чебурашка, ты не ушибся?チェブラーシカ、けがはないかい?)

チェブ:Нет, даже ни капельки.(ううん、全然。)

ゲーナ:Молодец, я так за тебя испугался!(よかった、心配したよ!)

 

ушибсяの不定形はушибить(傷つける)に-сяがくっついた形で、「自分を傷つける」つまり「けがをする」となります。

私の持っている辞書にはушибитьだけ載っていてушибитьсяは見当たりませんでしたが、-ся動詞は基本的に「動詞+себя(自身に)」が縮まった形なので、このように-сяがついていない形から意味を類推できることも多いです。

チェブの答えた"даже ни капельки"というのは、даже(〜さえも)とкапелька「ほんの少し」の複数形で「ほんの少しも(けがをして)ない」という意味ですね。

молодецは「良かった、良くやった」という意味なので、相手を褒めるときに使う語という印象があったのですが、今回のように「よかった〜、ほっとしたよ」という意味でも使えるのですね。

 испугалсяはиспугать(怖がらせる)に-сяがくっついて「怖がる」、の男性単数形。за+対格(この場合はтыの対格тебя)を接続して、「君がけがをしていないか心配で怖かったよ!」と言っています。ゲーナがチェブのことを心から大切に思っていることがわかる台詞です。

 

ところでチェブが墜落したのは、さっきのピオネールの少年達がいるところでした。

少年達、何やらテキパキと大工仕事をしています。

 

チェブ:Опять пионеры. Ген, а Ген, давай попросимся к ним, а?

(またピオネールだ。ゲーナ、ねえゲーナ、彼らに(入団させてって)頼んでみよう、ね?)

ゲーナ:Нет, Чебурашка, они нас не возьмут.

(だめだよ、チェブラーシカ、僕らなんか入れてくれないよ。)

チェブ:Почему? Возьмут! Пойдём, а?(どうして? 入れてくれるよ! やってみようよ、ね?)

ゲーナ:Давай попробуем.(聞いてみようか。)

 

チェブがゲーナのことをГен(ゲン)と呼んでいますね。短縮形で相手への親しみを表しているのでしょう。「ゲーナ」でも充分短いと思うけどね(笑)。

давай попросимсяと、先ほど出てきた勧誘文が使われています。попросимсяの原形попроситьсяは「許可を得る」なので、к ним(彼らに)と続いて「彼らのところに(入れてもらえるように)頼んでみよう」ということ。

ゲーナは慌てて"они нас не возьмут."と返します。возьмутは不規則変化動詞взятьの三人称単数形ですね。

взятьは「取る、つかむ、連れて行く、持って行く」などなど多様な意味をもつ動詞ですが、英語のtakeの意味と重なる部分が多いように思います。ゲーナは「彼らは僕たちを連れて行かない」つまり「仲間になんて入れてもらえないよ」と言っているのですね。

 

それでも「大丈夫だよ! やってみようよ!」となぜか自信満々のチェブに押され、ピオネールに入れてもらうよう頼むことにしたゲーナ。

さて、どうなることやら…。

と、今日はここでおしまいです。

 

細か〜いところまで突っ込んで分析しているので、相変わらず大変ゆったりとした歩みですが、少しずつ着実に進んでいこうと思います。

また近いうちに続きができたらいいなあ。マイペースで、楽しんでやっていきますよ。

 

では、また。