かあさんは雨女

語学と育児、その他いろいろ。

英語&スペイン語詞で名曲解説 "It's a small world"(ディズニーランドより)

こんにちは。語学大好きかあさん、マミです。

 

久々の更新となりました。

前々回「準備が間に合わない…!」とテンパっていたロシア語試験ТРКИですが、無事に受験を終了してしまいました。

「ТРКИ準備期間も、息抜き程度に少しずつ更新します〜」なんて言っていましたが、ほとんど書けませんでしたね…。

このブログでは「いつものこと」になりつつありますが、まあマイペースな更新頻度で今後ともよろしくお願いいたします。

ТРКИの受験レポートは、「ロシア語の部屋」のほうで改めてまたアップいたします。

 

 

で、今回はロシア語学習をちょっと休憩して、英語とスペイン語のことを書こうと思います。

 

わたくし実は、先日、東京ディズニーランドに遊びに行ってまいりまして。

そのとき乗ったアトラクションの一つ「イッツ・ア・スモール・ワールド」の歌詞がとっても素敵なので、この英語詞をブログで解説しようかな〜なんて、ぼんやり考えておったのです。

それで色々と調べておりましたところ、この歌、なんとスペイン語もあるとのこと!

 

これは、ブログで取り上げない手はない!!

 

ということで、今回はこの名曲"It's a small world"の歌詞を、日本語も含め3カ国語でじっくり吟味してまいりますよ〜。

ちなみに、この曲には他の言語バージョンもあるのかしら…? と思って調べてみたところ、正確な数はわからなかったのですが、他のバージョンもいくつか見つけました。せっかくなので、タイトルだけでも各国語で比較してみます。

 

英語→"It's a small world"

日本語→「小さな世界」

スペイン語"Muy pequeño el mundo es"

フランス語→"Le monde est petit"

中国語→"世界真細小"

 

タイトルは、だいたいどれも「世界は小さい」という意味のようですな。

日本と同様、フランスと中国にはディズニーランドのテーマパークがあるので、フルバージョンの歌詞も存在するようです。でもこの中に混じってスペイン語フルバージョンもある(スペイン語圏にはディズニーランドないのに!)というのは、さすが話者数世界第3位の大言語といったところですね。

 

この他、YouTubeのDisney Park公式チャンネルには、ディズニーランドのバイリンガルスタッフがこの歌を色んな言語で代わる代わる歌っている動画もありました。→こちら

この動画の中には、上記5言語に加え、ペルシャ語オランダ語ポルトガル語アラビア語・ドイツ語・英語手話・韓国語・イタリア語・ポーランド語・ヒンディー語ギリシャ語の歌詞がありました。

これらの言語にそれぞれフルバージョンがあるのかどうかは不明ですが、世界中で親しまれている曲であることは間違いなさそうですね。

 

ちなみに、この動画を観て「ロシア語がないやないか、おい!!」ということに気付いてしまったので、ロシア語バージョンについても調べてみました。

タイトルは"Этот маленький мир"(「この小さな世界」という意味)という露訳が見つかったのですが、歌詞の中身までは見つけられず…。どうやらロシア語版は存在しないようです。

 

 

えーと、どうも語学の話になると長くなっちゃいますね。

ここから本題です。"It's a small world"の歌詞を吟味してまいります。

 

まずはお馴染み、日本語バージョン。

 

『小さな世界』

 

世界中 どこだって 笑いあり 涙あり
みんな それぞれ 助け合う 小さな世界
※世界はせまい 世界は同じ
世界はまるい ただひとつ※

世界中 だれだって ほほえめば なかよしさ
みんな 輪になり 手をつなごう 小さな世界
※繰り返し

限りない 空と海 星影の うつくしさ
それは 一人 語りかける 小さな世界
※繰り返し

隔たりを 取り除き 友情の 橋をかけ
手と手を つなぎ つくろう
小さな世界
※繰り返し

世界中 だれでもが 自由を 求める
その叫びが こだまする 小さな世界
※繰り返し

 

えっ、こんなにあったの!?

第2連まではおなじみの歌詞ですが、どうやら続きがあったもよう…?

 

こちらの歌詞は、テーマパーク情報サイトCASTELの記事から引用したものなのですが、正直に言うと、この3〜5連までの歌詞が公式なものなのかどうかはわからずじまいでした(3〜5連の歌詞をぐぐってみると、個人ブログのようなサイトはいくつかヒットするので、ある程度定着している詞ではあるようですが…)。

でも「星影の美しさ」「自由を求める(略)叫びがこだまする」…なんとも詩的で印象に残る歌詞ですね。

アトラクションでも最後まで歌われているのかしら? こんど乗るときは耳をすませてみよう…。

 

この訳詞は、NHKみんなのうた」で童謡「めいわく団地」や「パンダ・ダ・パ・ヤッ」の歌詞を手がけた若谷和子さんによるもの。子どもの頃から慣れ親しんだ歌の作詞家さんだったので驚きました。

そして、本家英語バージョン(下記)と比較してみると、歌詞の内容はあまり対応しておらず、日本語詞のオリジナリティが光っています。英語→スペイン語がほぼ逐語訳なのと対照的。

 

以前「コーヒールンバ」のスペイン語原詞について解説したときも書きましたが、外国語の歌の日本語訳詞というのは、ガラパゴス化しやすいものなのかしら…。

原作の詞を無視して(完全無視というわけではなかろうが…)日本語の世界を作っちゃうというのも、日本文化ならではという気がします。

 

 

では、次に英語の歌詞です(訳は私がつけました)。

 

"It's a Small World"

 

It's a world of laughter, a world of tears(ここは笑顔の世界、涙の世界)

It's a world of hopes and a world of fears(ここは希望の世界、そして恐怖の世界)

There's so much that we share(分かち合えるものがこんなにたくさんあるのだから)

That it's time we're aware(私たちは気付くときだ)

It's a small world after all(この世界はまったく小さい、ということに)

 

It's a small world after all(結局は小さな世界)

It's a small world after all

It's a small world after all

It's a small, small world(小さな、小さな世界)

 

There is just one moon and one golden sun(月も、黄金の太陽もたった一つ)

And a smile means friendship to everyone(笑顔はみんなとの友情の証)

Though the mountains divide(山は世界を分かち)

And the oceans are wide(そして海は広いけれど)

It's a small world after all(結局は小さな世界)

 

うーん、なるほど。

「世界は広いように見えるけど、本当はとっても小さいんだよ、隣の人と手をとり合っていこうよ」

 という趣旨の歌詞なんですね。

 

“after all”というイディオムは「結局、つまるところ」という意味ですが、この歌詞ではどうもニュアンスが訳しづらいですね。

「まあ色々言っても、結局は世界って小さいんだよ」ということですが、日本語でいう「結局」はなんだかあきらめのようなニュアンスが入ってしまうので、ちょっとしっくりきません。どう訳すのがいいんだろう?

 

あと、おもしろいなーと思ったのはサビの部分。

日本語では「世界はせまい、世界は同じ、世界は丸い」と言っていますが、英語だとIt’s a small world after all”と全く同じ歌詞を3回繰り返していますね。

日本語という言語の性質上、同じメロディに込められる歌詞が少ないため(たとえば、日本語詞の歌い出しで「世界中」と言っている間に、英語詞だとIt’s a world of laughter”まで言えちゃうわけです)、こういうところで語数を稼いで(?)いるわけだ。

 

そして、3行目以降の構文も気になりました。

“There’s so much that we share that it’s time we’re aware it’s a small world after all.”

これで一文…ということでいいのかな? それともどこかで文が切れるんだろうか…。

下線をひいた二つの“that”はたぶん関係代名詞ですね。“... we’re aware”の後で文を切ってもよさそう。

 

まあ、歌詞なのであまりゴリゴリに文法解釈をするのもどうかという感じですが…。

「世界は結局とても小さいのだということに私たちは気づくべき時だ、だから分かち合えるものはたくさんあるんだ」

というような意味ととらえればOKでしょうか。

 

あとは特に難しいところはないですね。子どもの歌だし、シンプルなことばが続いています。

 

では続いて、スペイン語の歌詞を見てみましょう。

 

"Muy Pequeño el Mundo Es"

 

En el mundo hay risas y dolor(世界には笑いと痛みがある)

Esperanzas y hay también temor(希望があり、そして恐怖もある)

Mucho hay en verdad que poder compartir(分かち合えるものは本当にたくさんある)

Entre la humanidad.人間性によって)

 

Muy pequeño el mundo es(世界はとても小さい)

Muy pequeño el mundo es(世界はとても小さい)

Debe haber más hermandad(もっと兄弟愛があるべきだ)

Muy pequeño el mundo es(世界はとても小さいのだから)

 

Una luna hay solo hay un sol(月はたった一つ、太陽も一つ)

Para todos brillan sin distinción(それらは全てを分け隔てなく照らすためのもの)

Y aunque muy grandes son

Las montañas y el mar(山と海がたとえどんなに大きくても)

Muy pequeño el mundo es(世界はとても小さい)

 

 

こうして訳してみると、歌詞のおおまかな内容は、英語詞を忠実に訳したような表現になっていますね。

ただ、スペイン語ならではの言い回しもあるのが興味深いです。

 

例えば、冒頭の「笑いあり涙あり」のところ。

英語では、

“laughter/tears”(笑顔/涙)

の対になっていますが、スペイン語では、

“risas/dolor”(笑顔/苦痛)になっていますね。

 

これは、「涙」を逐語訳して“lágrimas”にすると、次の行の“temor”(恐怖)と韻が踏めなくなるからでしょうか。

ほかの箇所ではあんまり韻を踏んでいないようなので、脚韻のためなのかは定かではありませんが、訳詞をされた方のこだわりが垣間見えるような気がいたします。

 

第1連の最終行、“entre la humanidad”というのも、スペイン語オリジナルの表現ですね。

直訳すると「人間性の中で」となります。

この箇所、英語版では“It’s a small world after all”とサビのフレーズを言っているだけの部分なので、こういう表現を差し込んだのも訳詞者のこだわりポイントなのかもしれません。

 

そして、原詞と違うところでもう一箇所目を惹くのが、サビの3行目。

“Debe haber más hermandad”

“hermandad”は“hermano”(兄弟)の派生語で「兄弟愛」という意味の名詞です。

動詞“deber”は、後ろに動詞の不定形をつけて「〜すべきだ、〜しなければならない」という意味なので、ここは直訳すると「もっと兄弟愛があるべきだ」となります。

 

サビの部分って、英語版では“It’s a small world after all”を4回もひたすら繰り返しているのですが、スペイン語ではその3回目だけがこの“Debe haber más hermandad”になっているわけ。

4回繰り返すはずの規則を3回目だけ外してくるというのは、漢詩の絶句(4行詞)の脚韻のルールにも通じるところがあって、語学オタク国語教師としては思わず唸ってしまうところです。

起承転結の「転」の部分だけちょっと目を惹く作りにするということですね。こういう工夫を加える感覚って、実は世界共通なのかもしれない…と思うとなんだか興奮しちゃうのは私だけ?

 

そして、“Debe haber más hermandad”という表現。

もとの英語詞にはあんまり強い主張がみられないのですが、スペイン語詞だとここで“Deber”という動詞を使って強烈なメッセージを放っているように、私には見えました。

「もっとみんな仲良くできるよ! 人類みんな兄弟なんだから!」と力説する声が聞こえてくるようです。

 

逆に2番の歌詞では、英語詞で

“And a smile means friendship to everyone”(笑顔は友情の証)

という優しげなメッセージが込められているところがスペイン語ではスルーされ、代わりに

“Para todos brillan sin distinción”((太陽と月は)分け隔てなくみんなを照らす)

という表現に差し替えられています。

 

これも、英語での表現と比較するとやや強いメッセージというか、「太陽のパワー!  みんなを照らすこのエネルギー!! ビカーッ!!!」てなことを、なんだか大声で主張しているように私には見えるのです。

 

さて、ここまで英語詞とスペイン語詞(と日本語詞)を比較して考えてみました。

私の考えすぎかもしれませんが、やっぱり翻訳って単なる機械的な作業ではなく、訳した人の性格が出ると思うのです。

 

機械翻訳の台頭で、翻訳家や通訳の仕事もなくなるかと危ぶまれる昨今ですが、まだまだこういうことは人間がやった方が面白いんじゃないかと思うのです。

あるいは、AIもそれぞれ訳し方の個性をもつようになって、人間の訳と比較するとまた面白い…ということが起きたりして。

これからどうなっていくのでしょうね。

 

では、今日はこのへんでおしまいにします。

ミッフィーのぼうけん」のディクテーションも、新しいエピソード(再放送だけどこのブログで扱ってないやつ)が放送され始めているので改めて扱いたいのですが、いかんせん仕事に復帰してしまったため、あまり時間がとれずにいます。

でもブログは書き続けたいので、できることをやっていく所存です。

 

ではまた、近いうちにお会いしましょう〜。