お誕生日には魔法を。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ〈第二話〉 その①〜
こんにちは。
早くも12月ですね。年の瀬が迫ってくると、帰省の準備やら年賀状やら今年はどうしよう…と気持ちだけバタバタしてしてしまう(まだな〜んもしてません!)新米かあさん、マミです。
さて、今日はたいへん久しぶりに(3ヵ月ぶり!)ロシア語学習を再開いたします。
ソ連時代の愛くるしい人形アニメ「チェブラーシカ」のせりふを訳しながら解説していくプロジェクト、第二弾。今日から、4本立てDVDの第2話、サブタイトルもずばり"Чебурашка"(チェブラーシカ)を少しずつお届けしていきます。
※作品情報やこの「チェブラーシカでロシア語を学ぶ」プロジェクトの詳細については、こちらの過去記事をご覧ください。
また、第1話「ワニのゲーナ」の訳と解説(全6回)をご覧になりたい方は、この記事のカテゴリ「ロシア語学習」をクリックして各ページに飛んでくださいね。
では、さっそく「チェブラーシカ」のお話をひもといていきましょう。
冒頭は、チェブラーシカの友だちのゲーナの弾き語りから始まります。街角で、ロシア式アコーディオン「ガルモーシカ」という楽器を弾きながら歌っているのですね。
この「ゲーナの歌(タイトル不明)」、降りしきる雨の中で歌われるなんとも切なげで哀愁あふれるメロディが、一度聴いたら頭から離れなくなります。ロシア語に興味のない人にも、ぜひ聴いてもらいたい一曲。(Youtubeで聴きたい方はこちらをどうぞ)
今回はこの歌の詞を取り上げていきますよー。
Пусть бегут неуклюже
Пешеходы по лужам,
(道ゆく人たちが、ぎこちなく水たまりの中を走っていく)
А вода - по асфальту рекой.
(水は、川となってアスファルトを流れていく)
И не ясно прохожим,
(通行人たちには、わからないだろう)
В этот день непогожий,
(こんな雨の日に)
Почему я весёлый такой.
(なぜ私が、こんなに陽気でいるかを)
最初の2行は、分けてしまうと訳しにくいので1行にして訳しました。
пустьはпускать(〜させる)という動詞がもとになっていて、「〜させておく」という意味。
бегутは定方向動詞бежать(走る)の3人称複数形。あっちからこっちへ、一定方向に向けて走る、ということですね。
неуклюжеは「ぎこちなく」という意味の副詞。
で、пусть бегут неуклюжеで「彼らにはぎこちなく走らせておこう」という意味になりますね。
走るって誰が? という疑問が浮かびますが、この「主語」の部分が次の単語пешеходыです。「歩行者」という意味のпешеходの複数形ですね。
поは与格を伴って「〜に沿って、〜の中を」という意味になる前置詞。 「水たまり」という意味の名詞лужаの複数与格лужамに接続して、「水たまりの中を(走っていく)」という意味になります。
次のА вода - по асфальтуという表現も、同じくпо+与格の形で「水が、アスファルトの中を(流れる)」ということですね。река(川)の造格рекойが後ろにくっついているので、「川となっていく」というような意味。
次のне ясно прохожимですが、прохожий(通行人)の複数与格で「通行人たちにとって」。
ясноは「明らかである」という意味の副詞なので、「通行人たちには、よくわからない」ということ。
непогожийは、「晴れた」という意味のпогожийに否定の接頭辞неがついて「天気のよくない、雨の」という意味になります。
つまり、「雨の中、みんなバタバタと家路を急ぐなかで、僕がなぜ陽気に歌ってるのかわからないでしょ?」と言っているのですね。
「なぜ?」の答えは、次の詞で語られます。
*А я играю на гармошке
(そして僕はガルモーシカを弾く)
У прохожих на виду...
(この場にいる通行人たちの中で…)
К сожаленью, день рожденья
(残念なことだ、誕生日は)
Только раз в году.*
(1年に1回しかないなんて)
играюは動詞игратьの一人称単数形。игратьといえば、英語のplayと同じで「遊ぶ」「(楽器を)演奏する」「(スポーツを)する」といった意味をもつ動詞ですね。
ただ、игратьはその使い方によって、接続する前置詞や名詞の格が異なるので注意が必要です。
играть на+前置格(楽器名)…楽器を演奏する
играть в+対格(スポーツ名)…スポーツをする
ここでは、играю на гармошкеなので「ガルモーシカ(гармошка)を演奏する」となるのですね。
у прохожихは、у+生格の形(不定形はпрохожий)で「通行人のところで」。
на видуは、видという語が「景色」なので「景色の中にいる」くらいの意味でしょうか。
к сожаленьюは定型表現で「残念ながら」。非常によく見かけるフレーズですね。
день рожденьяも「誕生日」という決まった表現。
раз в годуで「1年に1回きり」となります。
誕生日ということばが出てきましたが、誰かの誕生日なのでしょうか。
だから雨の中でも陽気に歌っているのですね。
Прилетит вдруг волшебник
(突然、魔法使いが飛んでくる)
В голубом вертолёте,
(水色のヘリコプターに乗って)
И бесплатно покажет кино.
(そしてただで映画を見せてくれるんだ)
С днём рожденья поздравит,
(誕生日には、お祝いをしてくれる)
И, наверно, оставит
(そしてきっと、くれるんだ)
Мне в подарок пятьсот эскимо.
(僕に、500個のアイスのプレゼントを)
*くりかえし*
прилетитはприлететь(飛んでやってくる)の3人称単数形。
в голубом вертолётеは、в+前置格の形(不定形はголубой вертолёт)で「水色のヘリコプターに乗って」。
бесплатноは「無料で」という意味の副詞ですね。бес(〜のない)とплата(料金)が合わさった語です。
покажетは「見せる」という意味の動詞показатьの3人称単数形。不規則変化ですね。
поздравитは「祝う」を意味する動詞поздравитьの3人称単数形。完了体です。「祝う」という表現では、不完了体のпоздравлятьの方をよく目にしますね。
наверноは副詞で、「確かに」という意味になったり「たぶん」という意味になったりします。この使い分け、私にはよく理解できていないのですが、文脈で判断するということなんでしょうかねー。「確かに」と「たぶん」が同じ語だと色々と困ると思うんですが、うーん…勉強不足。
оставитは「残していく、くれる」という意味のоставитьの3人称単数形。
эскимоという語はアイスクリームを意味します。「エスキモー」という響きから「商品名かな?」と思ったのですが、きちんと辞書にも載っている一般名詞で、棒付きアイスを指すようです。日本でいうと、ホームランバーみたいなものでしょうか(?)。
というわけで、歌詞の内容から、どうやら今日はゲーナの誕生日のようです。
誕生日なんだから、きっと魔法使いが来て映画をタダで見せてくれる、アイスを500個もくれる…なんて想像の世界が広がっていきますが、そのわりには哀しげなメロディーが流れていきます…。そして「誕生日が1年に1回しかないなんて、残念…」という歌詞の繰り返し。
何だか、ちぐはぐな世界観で、冒頭から独特の雰囲気を醸していますね。
さて、今日はここまでです。
次回はそんなゲーナのもとに、主人公のチェブラーシカが駆けつけますよ。
次の更新は毎週恒例「ミッフィー」の英語ディクテーションです。
このロシア語プロジェクトも毎週更新にしていきたいのですが、恐らく週2回の更新はちょっと厳しいので、時間ができたときに少しずつ進めていくことになると思います。
いつものごとく、気長にお待ちいただければ幸いです。
では、またお会いしましょう〜。