かあさんは雨女

語学と育児、その他いろいろ。

バナナではなく、スイカの皮を。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その⑤〜

こんにちは。

昨日、3時間かけて書いた力作記事が筆者痛恨のミスによって消滅しましたが、がんばって書き直しました。

もう育児ネタを書く気力もないくらい、消耗しております。

誰か、ほめて!

力いっぱい、ほめて!!

 

というわけで、「チェブラーシカ」続きです。

 

前回までの記事はこちら。

「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ。〜プロローグ〜

チェブラーシカの名前の秘密。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その①〜

名前だって変幻自在。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その②〜

いたずらで宣戦布告?〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その③〜

独りぼっちの誰かのために。〜「チェブラーシカ」でロシア語を学ぶ その④〜

 

 

友だちがいない人のために、何かしてあげたい…。そんな思いを募らせるゲーナたち。

 

ナレーション:И они решили построить домик, для тех, у кого нет друзей.

そこで、彼らは友だちのいない人のために、家を建てることにした。)

 

なんと家を建てるんだそうです。

しかも、次なる場面は工事現場(строительство)。ということは、1から建てるのかあ。うーん、本格的です。

решилиはрешитьの複数形過去。решитьは「解く、解決する」の意味をもつ完了体動詞ですが、「決める」という意味もあります。ちなみに不完了体はрешатьですね。

домикはдома(家)の派生語で、「小さな家」という意味。

для тех, у кого нет друзейという箇所がちょっと難解。一つずつ分解していきましょう。

техは「その」を表す指示代名詞тоの変化形。「〜のために」を意味するдляの要求で複数生格になっています。つまり、для техで「その(何か)のために」。

ではтехとは何を指すのか、を示しているのが、以下の у кого нет друзейです。

у +生格は基本の形で「〜のところに」、そこに人を指す関係代名詞ктоの生格形когоが入っていて、нет друзей(友だちがいない)と続きます。

つまり、「その人のところに友だちがいない、そういう人のために」ということになるわけです。

細かく説明しすぎて逆にわかりづらいかもしれませんね。気を取り直して次にいきましょう。

 

ゲーナ:Сто-о-о-п!(ストーップ!)

チェブ:Майна!(下げて!)

ガーリャ:Виррра!(上げて!)

ゲーナ:Трави по - малу!(ちょっとずつ動かして!)

ガーリャ:Кантуй!(ひっくり返して!)

ゲーナ:Давай давай!(オーライ、オーライ!)

 

レンガを満載したトラックに、口々に指示を出すゲーナ組。そんなに色々言っちゃあ、逆に危ないんじゃ…と思っていると、案の定! トラックからレンガの山がなだれ落ち、チェブラーシカは間一髪でゲーナに助けられました。ほーら言わんこっちゃない。

このмайна/вираという語の組み合わせ、辞書を引いてみても「майна...九官鳥?」「вира...殺人罪の賠償金???」と意味が不明だったのですが、"майна вира"と組み合わせ検索してみたところ、どうやらこの2語が対になって「下げる/上げる」の意味をなすらしいということがわかりました。ただ、なぜ九官鳥と賠償金が対になるのか?? という謎は深まるばかりです。

трави по-малуというフレーズについて、травиは恐らくтравитьの単数命令形。「毒を盛る、刻む、狩る、迫害する」という恐ろしげな意味をもつ動詞ですが、レンガを降ろすという危険な作業を指示しているのでこんな動詞が使われるのでしょうか。по-малуは「少し」という意味で、мало по-малу「少しずつ」という成句もありますね。

кантуиは、кантовать(傾ける、ひっくり返す)という動詞の単数命令形。-оватьで終わる動詞は活用の形が独特です。

давайは、言わずと知れたдаватьの単数命令形で、他の動詞とくっついて「〜してください」という意味になりますが、давайのみを用いて「いいよ、オーライ!」という意味でも使えます。

 

さて、和気あいあいと工事を始めたゲーナ組ですが、ここでいたずら大好きばあさん・シェパクリャクの再登場。なんと、塀の向こうからスイカの皮を大量に投げ込むという嫌がらせっぷり。見事、ゲーナ組の皆さんは吉本新喜劇のようにコロコロとすっ転びます。こういうとき、日本では(?)バナナの皮を投げるものかなあと思うのですが、ロシアではスイカを使うのが一般的なのでしょうか。文化の違い、おもしろいですね。

 

と、そこへ、まつげの長い、妙に色っぽい雰囲気をたたえたキリンさんが登場します。

続いて人間のおじさんや猫さんも、続々と集まってきました。

 

キリン:Скажите, здесь строят дом?(教えてください、家を建てているのはここですか?)

チェブ:Здесь.(ここだよ。)

 猫:Вам нужны помощники?(あなた達、手伝いが必要?)

チェブ:Конечно, нужны! Входи, и вы тоже.(もちろん、必要だよ! 入って、君たちも!)

 

このскажите(教えてください)という語は、初級ロシア語の最重要フレーズとしてよく目にしますね。私もロシアへ旅をしたときは、道を聞くときなど頻繁に"Скажите, пожалуйста."のフレーズを使用しました。

続くздесь строят дом?という疑問文について。ロシア語の疑問文は、「どの部分のイントネーションを強調して発音するか」によって何を聞きたいかが違ってきます。この文の場合、「здесь=ここで建てているのか」「строят(建てるという意味のстроитьの変化形)=建てているのかどうか」「 дом=家を建てているのか」と、どの語を強くはね上げて発音するかで疑問の内容が異なるわけです。この場面のキリンさんは、здесьを強調して発音しているので、「工事をしているのは、ここかしら?」という疑問になるわけですね。

続く猫さんのせりふ、нужныはнужноの複数形。与格+нужно〜で、「〜を必要とする」というフレーズです。помощникは「手伝う人、助手」。

входиはвходить(中に入る)という完了体動詞の単数命令形です。

 

さて、仲間も増え、ますます工事は順調に進んでいきます。

場面は変わって夜。懲りずにシェパクリャクばあさんの再登場です。闇にまぎれて、いらんことをしに来たようですね。

手始めに、工事現場前の掲示板にいたずら。見出しには"Не проходите мимо!"とありますが、проходите(проходитьの二人称複数)が「通り過ぎる」という意味なので、つまり「通り過ぎないで!」「注意!」という意味の掲示板ですね。

ここにシェパクリャクばあさんの写真が貼られていて、要するに「要注意人物」ということなのでしょうが、シェパクリャクはあろうことか、この写真を隣に貼られているチェブラーシカの写真と入れ替えてしまいます。

で、この隣の掲示板は何かというと、"доска почета"とあります。これは直訳すると「名誉の黒板」ということなのですが、インターネットで調べてみたところ、どうやらソビエト連邦特有のものらしいです。なんでも、「名誉ある生産者」の顔写真を貼ってたたえるために、工場などの前に掲示されていたものだとか。こんなところにも当時の時代背景(1969年製作ですからね)を思わせるものが登場していたんですね。

チェブラーシカたちが「名誉ある生産者」だなんて大げさな気もしますが、こうやって小さな人物たちの行動に大仰な演出をつけることの「おかしみ」というのも、このアニメの魅力であるように感じています。

 

さて、「名誉ある人物」と「要注意人物」を入れ替えることに成功したシェパクリャクばあさん、いよいよ本番のいたずらをしようと工事現場の扉を開けます。ところが、そこには寝ずの番(!)をしていたレフとトービクの姿が!!

犬のトービクに吠えかかられ、一目散に逃げだすシェパクリャク。

 

シェパ:Караул! Разбойники!(見張り番! どろぼう!)

 

びっくり、動転してのせりふなのでしょうが、「どっちがどろぼうやねん!」という関西人(私)のツッコミが冴え渡ります。

 

ここで、たいへん細かいですが、逃げる道中の夜の街並みに注目してみます。

昼間、シェパクリャクがいたずらをしまくった通りが再登場しますが、向きを変えられていた"переход(横断歩道)"の標識は元に戻され、落書きされた掲示板も、上から白い紙できちんと訂正されているのです!

ななな、なんと芸の細かい…。薄明かりの中ですし、巻き戻してコマ送りしないとわからないくらいのところですが、制作者のこだわりが光りますね。個人的には、こういうこだわりは大好物でございます。

 

シェパ:Порядок, сюда ему не влезть.(よかった、彼(トービク)はここまで来ない。)

 

木の上まで逃げおおせたシェパクリャク、ほっと一息。

порядокは「順番、秩序」という意味の語ですが、あいさつの会話で「元気ですか?」と聞かれたときの返事として"Всё в порядке."(すべて順調です)というフレーズがあるので、ここでも「うまくいった、順調順調」というニュアンスで使われているものなのでしょう。

влезтьは「登る、入ってくる」という意味の動詞です。

 

さて、シェパクリャクのいたずらもきちんと回避し、「友だちの家」完成の日が近づいています。

このロシア語解説も、次くらいで終われるかな?(終わったら次のエピソードもやりますよ!)

ひょっとしたらあと2回かかるかもしれませんが、気長にお付き合いください。

 

次回は、また英語に戻ります。9月9日(日)に放映された「ミッフィーのぼうけん」のディクテーションです。

これからは、英語とロシア語を交互に、うまいことやっていけたらいいな。

 

では、ようやくこれで昨日消し去ってしまった記事(まだ言ってる…)を再構築できましたので、満ち足りた気分で床に入ろうと思います。

また近いうちにお会いしましょう。

おやすみなさい。